「乳がんと闘いながらキャスターとして復帰」恩田千佐子さんの勇気ある挑戦
中京テレビの看板アナウンサーである恩田千佐子さんが、2017年に乳がんを発症し、手術を受けた。現在も夕方の報道番組『キャッチ!』を担当しながら、治療を続けている。
恩田さんは、12年間『キャッチ!』のメインキャスターを務め、東海3県の夕方の顔として“おんちゃん”の愛称で親しまれている。2017年に右胸で乳がんが見つかった際、定期的な人間ドックでマンモグラフィーとエコーの検査を受けていたが、2017年に再び分泌物が出て、精密検査で乳がんと診断された。
恩田さんは、番組内で乳がんの手術のために一時休むことを自ら公表し、局に相談して治療経過を映像として記録することを申し出た。乳がんは女性の9人に1人がなる病気であり、自分の経過をリアルに伝えることで、多くの人に参考にしてもらいたいと考えた。
カメラは診察室や手術室にも入り、病室での家族との会話も撮影された。恩田さんは治療中にさまざまな感情を経験し、不安に涙ぐむ姿も映された。手術では右乳房の全摘出と再建手術が同時に行われたが、術中の検査でリンパ節への転移が見つかり、ステージ2Bと診断された。
術後約2週間で番組に復帰したが、乳房再建手術の傷口がふさがらず、再手術を受け、抗がん剤治療も開始した。抗がん剤の副作用により、脱毛や吐き気などの症状が現れ、約3か月間休職した。
手術や治療の困難を乗り越える中で、恩田さんのモチベーションとなったのは「仕事に復帰する」という目標だった。番組で後輩が頑張っている姿を見て、自分も頑張ろうと励まされた。
再手術を乗り越え、抗がん剤の副作用も落ち着いた後、ショートスタイルのウィッグ姿で『キャッチ!』の生放送に復帰した。乳がんの手術から4か月ぶりの本格復帰となった。恩田さんの治療に密着したドキュメンタリー番組も放送され、大きな反響を呼んだ。
恩田さんは、多くの励ましや共感が寄せられた中で、「番組を見て検診を受けた」という声が多かったことをうれしく思っている。定期的な検診の重要性を強調し、異変を感じたらすぐに受診することの必要性を訴えている。
現在、恩田さんは再発予防のためのホルモン療法を、術後10年間続ける予定で継続中。また、がんに関する情報発信にも力を入れ、がんになっても仕事を諦めないことが大切だと強調している。
「今や‘がん=死’という時代ではありません。治療の長期化による治療費の問題もありますが、がんになっても仕事を続けることが何より大切です。ただし、病状や職場の環境は人それぞれ。がんになったら弱気になりがちですが、仕事についてはぜひ強気で、職場と患者双方で、できること、できないことをよくすり合わせて、無理なく働き続けられる道を見つけることが大切です」と語っている。