水木しげると松本零士、娘たちが明かす巨匠の意外な一面と遺志の継承
漫画やアニメで今も親しまれる『ゲゲゲの鬼太郎』の作者、水木しげるさんと、『銀河鉄道999』の作者、松本零士さん。二人の娘、原口尚子さんと松本摩紀子さんが、父親の素顔や思い出を語った。
原口さんは、水木さんが戦争体験を家族にはあまり話さなかったと振り返る。「戦時中はすごく腹が減って缶詰を手で開けたんだぞ」といったポジティブな話ばかりだったため、子供の頃は戦争が楽しいものだと思っていた。しかし、水木さんのエッセイを読むと、激戦地で左腕を失いながらも生き延びた過酷な経験が明らかになった。
松本さんは、松本零士さんが愛媛県の新谷村で少年らしい時期を過ごしたことを『昆虫国漂流記』に描いていると話す。戦後の貧困や戦争の怖さも体験し、その影響が作品に反映されている。
二人の父親は、それぞれの娘にとって「普通」がわからなかった存在だった。原口さんは、水木さんが面倒くさかったと語る。「何を聞いてもまっとうな答えが返ってこなかった。家の中の普通が、外では普通じゃなかった」と振り返る。水木家では、オナラが家族間の笑いの種だった。
松本さんも、松本零士さんが寡黙で、自分の世界に入っていることが多かったと話す。「話しかけても返事もしない。勝手な人だった」と語る。松本家でも、家の中の普通が外では普通ではなかった。
水木しげるさんは9年前に93歳で亡くなり、青山葬儀所でお別れの会を開いた。ファンの長蛇の列を見て、原口さんは「父はこんなにも多くの人に愛されていたんだ」と涙が溢れた。
松本零士さんは2023年2月に85歳で亡くなり、6月に行われたお別れ会の日には台風が直撃したが、多くのファンが駆けつけた。松本さんは、「父のためにも前に出ていこう」と決意し、公の場に顔を出すようになった。
二人の娘は、父親の作品を新しい読者に届け、新たな取り組みも進めていきたいと意気込んでいる。2023年11月から公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の大ヒットは、若い世代に水木しげるの作品を広めるきっかけとなった。松本さんも、2027年に『宇宙海賊キャプテンハーロック』と『銀河鉄道999』が連載開始から50年を迎え、ファンだけでなく新しい読者にも作品を届けたいと語る。