木曜劇場『ギークス~警察署の変人たち~』最終回

木曜劇場『ギークス~警察署の変人たち~』最終回

木曜劇場『ギークス~警察署の変人たち~』最終回

ついに、『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)の最終回が放送され、最後の推理が幕を開けた。主人公の西条唯(松岡茉優)の家に、10年前に亡くなった父親・西条真(堀部圭亮)の遺品が送られてきた。箱を開けると、中身のほとんどが仕事に関するものだったが、その中に一冊の手帳が見つかった。西条は手帳の9月10日の欄に記されていた「カッパの真ん中 605」という謎めいた言葉を発見する。

この不思議な書き込みの意味が分からず困惑した西条は、吉良ます美(田中みな実)と基山伊織(滝沢カレン)に相談することに。9月10日は西条が実家で過ごす最後の日で、翌日から一人暮らしを始める予定だった。真は「特別なプレゼントを用意する」と言い残して亡くなってしまっていた。

一方、小鳥遊署では芹沢直樹(中村蒼)が奇妙な空き巣事件を捜査していた。被害品は歯ブラシやうがい用のコップなど、一見して価値の低いものばかりだった。しかし、事件は立て続けに発生し、捜査は難航していた。

西条が調査した被害現場で、予想外の発見があった。侵入口付近に残されていたのは、オランウータンの足跡だった。この報告を芹沢らに笑われた西条だったが、吉良と基山を連れて大学の動物行動学研究室へ向かう。不在の教授に代わって応対した大学院生の今野勇気(猪塚健太)に、西条がオランウータンによる空き巣の可能性について尋ねると、今野は「完全にゼロとは言い切れないかもしれない」と答えた。

その頃、杉田翔(泉澤祐希)らは市民ホールで起きた爆破事件の鑑識作業に従事していた。被害は小規模にとどまったが、島根太一(マギー)の目に、爆弾に付けられた「木」のマークが留まった。このマークは、5年前に天才数学者・森智彦教授が自作の爆弾で起こした事故でも見られたものだった。しかし、森教授はその事故後に亡くなっていた。

捜査が進む中、新たな爆破予告が届く。芹沢らは予告された病院を捜索し、男子トイレで爆弾を発見。爆発まで残り7分という緊迫した状況下、芹沢は爆弾を持って病院外へ走り出し、橋の上から投げ捨てた。芹沢の機転により大事には至らなかったものの、彼自身は軽傷を負う。捜査に戻ろうとする芹沢に、西条は怒りをあらわにする。「自分が死んだら意味ないじゃないですか」という西条のセリフからは、自己犠牲を図る芹沢への、大切な仲間としての愛が感じ取れる叱責だった。

島根の鑑定により、今回の爆弾にも「木」のマークが確認される中、安達順平(白洲迅)が西条を訪ねる。仕事を家族より優先した父への不満を漏らす西条に、安達はある場所への同行を提案する。

その場所は、真が倒れた場所の近くにある「かっぱ橋」だった。手帳の「605」を6時5分と解釈した安達は、同時刻に西条を橋の中央へ案内する。そこには美しい夕日が広がっていた。安達は、これが真が西条に贈ろうとしていた景色ではないかと静かに語りかける。西条の表情が柔らかくなる中、二人は沈黙のまま、真が遺した美しい光景に見入っていた。

翌日、ネット上に新たな爆破予告が出現。夕方の犯行予告に、場所は不明と記されていた。動揺する芹沢のもとに、西条、吉良、基山が駆けつける。そして、署に呼び出されたのは大学院生の今野だ。

盗まれていたのは警備員の指紋だった。犯人はそれを利用してセキュリティを突破し、オランウータンの偽の足跡まで残していた巧妙な手口が明らかになる。追及される今野は犯行を認めるも、爆弾の場所については沈黙を貫く。森教授への崇拝と、その挫折への怒りが犯行の動機だった。

いよいよ最終回を迎えた『ギークス~警察署の変人たち~』。事件解決後、いつもの居酒屋で、変わらぬ会話を交わす3人ののんびりとした日々は、これからも続いていく。しかし私たちは、この温かな木曜の夜の風景をもう見られないと思うと、胸に何とも言えない寂しさが残る。

本作は、好奇心旺盛で、卓越した知識や技術を持ちながら、それぞれ異なる形で人間関係に苦手意識を抱く3人をポップに描きつつ、その根底では「無理にわかりあわなくてもいい」という静かなメッセージを伝えていたように思う。

例えば、基山の一人暮らし決意に見られるように、家族の問題を全て背負わずとも、各々が自立することで互いを支え合う道もある。西条が父親のことで行き詰まった時には、安達がそっとヒントをくれた。吉良と馬場園市長(ウエンツ瑛士)の関係性の変化もそうだ。無理に分かり合えなくても、ありのままの自分でいても、誰かがほんの少し寄り添ってくれる。そんなゆるっとした安心感が、本作には終始漂っていたように思う。

そしてそれは、本作を作り上げた演者やスタッフの中にも流れていた空気なのかもしれない。クランクアップを迎えた松岡茉優は「この現場の一番好きなところは、会社で言うところの上司部下にあたる人たちが、その垣根を越えてフラットに接しているところでした。各部が各部に敬意を持っているから、学校のような青春感が保たれていたのかなと思います」とコメントを残していた。

互いに敬意を持ちつつも、飾らずに接するという姿勢。それこそが、“ギーク”な3人が教えてくれた、人間関係をほんの少し豊かにする秘訣なのだろう。井戸端会議とまでは言わずとも、ちょっとした雑談ができる誰かがいる日常。そんな自分の周りにある小さな幸せに、改めて気付かされた気がした。

『ギークス~警察署の変人たち~』は、その独特の世界観と温かい人間ドラマで、多くの視聴者に愛された作品となった。最終回を迎え、3人のこれからが楽しみになる一方で、寂しさも感じさせる。しかし、彼らの物語は、私たちの心に深く刻まれ、これからも温かい思い出として残り続けることだろう。