『AKIRA』新装版の魅力:大友克洋の作品が再評価される理由
漫画家・イラストレーターの大友克洋の全集『OTOMO THE COMPLETE WORKS』の第2期が開始され、大作『AKIRA』の刊行も始まった。
最近、SNSでは「高校生は水木しげるは知っていても、大友克洋は知らない」というエピソードが話題になった。これは、大友克洋の作品が『セックス・ピストルズ』や『スター・ウォーズ』のように、登場当時に強烈な衝撃を与えたが、その衝撃が大きすぎて周囲の風景を一変させ、後の世代にとっては変更後の風景が標準になってしまったため、当時の衝撃が理解しづらい存在となっているからだろう。
1970年代半ばから1990年代にかけて、大友克洋は世界のコミックやイラストレーションに大きな影響を与えた。しかし、多くの作品が新刊で読むことができない状況が続いており、高校生が知らないのも無理はない。さらに、大友の作品には雑誌掲載されただけで単行本に収録されていないものが多数存在する。
全集の刊行により、これらの初期作品が初めて読めるようになった。特に、全集1巻で『銃声』を初めて読んだ時、救いのないストーリーや異なる絵柄に驚かされた。中学時代からの疑問が20年以上経ってようやく氷解した。
全集12巻『AKIRA 1』は、発表当時の内容を忠実に再現しており、KCデラックス版とは異なる点が多数ある。巻頭のカラーページや「アキラの冒頭」のイメージが大きく異なる。また、連載時の扉ページがそのまま掲載されているため、ストーリーの途切れる部分がわかりやすく、KCデラックス版との比較も楽しめる。
全集版は、KCデラックス版を何度も読んでいる人にとっても、新たな発見がたくさんある。扉ページや2色カラーのページ、強烈なシーンのカラーページなど、KCデラックス版を詳しく読んだ人ほど楽しめる要素が散りばめられている。
全集版『AKIRA』は、大友克洋の作品を何度も読んだ人だけでなく、彼のことを知らない人にとっても価値がある。漫画史に一時代を築いた大作家の画業が、全集を通じて再評価される意義は大きい。