クラスター社が描く「バーチャル経済圏」の未来

クラスター社が描く「バーチャル経済圏」の未来

クラスター社が描く「バーチャル経済圏」の未来

クラスター社が運営するメタバースプラットフォーム「cluster」は、8月28日に「Cluster Conference 2024」を開催し、その未来について発表しました。このカンファレンスでは、「すべてのユーザーが経済的にも、精神的にも‘豊か’になる世界へ」というメッセージが伝えられました。このメッセージの背景には、クラスター社が長年目指してきた「バーチャル経済圏」の構築があります。

バーチャル経済圏とは

「バーチャル経済圏」とは、バーチャル空間における経済活動の全体像を指します。これは、バーチャル空間内で商品やサービスが取引され、金銭の授受が日常的に行われるシステムです。クラスター社は、この概念を具体的に形にするために、数々のアップデートを重ねてきました。

clusterの経済活動の歴史

クラスター社は、プラットフォーム内でアバターに装着する「アクセサリー」の売買機能や、ワールド内で使える「クラフトアイテム」の取引機能を実装してきました。これらの機能追加により、cluster内で小規模ながらも経済活動が行われるようになりました。しかし、これらの機能はユーザーにとって大きなインパクトを与えるまでには至りませんでした。多くのユーザーにとって、これらの機能はあくまでもオプション的な存在で、日常的に利用するものではなかったからです。

アバターの市場

メタバースにおけるアバターの市場は、現時点で最も大きな市場の一つとなっています。ピクシブ社が運営する「BOOTH」のデータによると、2023年にはメタバース用アバターの市場規模が31億円に達しています。これは、メタバースにおけるアバターの重要性を示しています。

アバターは、ユーザーがバーチャル空間における自分自身を投影する存在であり、自分の理想や個性を表現する重要な手段です。そのため、多くのユーザーが自分にぴったりのアバターを求めています。アバターの売買は、バーチャル経済圏の重要な一部となっています。

メタバース内のサービス

メタバース内では、ゲームを楽しめるワールドや、バーチャルなカフェやバーで他のユーザーと交流できるワールド、特定のコンセプトに基づいて接客のロールプレイを楽しむことができるワールドなど、さまざまなバーチャルサービスが提供されています。これらのワールドも「サービス」を提供していますが、収益化が困難でした。clusterでは、個人による営利利用が禁じられていましたが、今回のアップデートで個人による営利利用が解禁されました。

新しい収益化システム

「Cluster Conference 2024」で発表された新しい収益化システムでは、ワールドへの課金システムの導入やアバターの常時販売など、クリエイターが収益を得る機会が大幅に増えます。ユーザーがワールドを体験したり、特別な体験をしたりした際に、直接ワールド作者に対して現金に交換できるポイントを送ることができるようになります。これは単なる金銭の授受だけでなく、「感謝の気持ち」を形にして贈ったり贈られたりする手段でもあります。

クラスター社のビジョン

クラスター社のCEO、加藤直人氏は、この新しい仕組みについて次のように説明しています。「クリエイティビティに対して感謝の気持ちとして何かが巡る。小さな感謝の気持ちや小さな喜びが積み重なると、クリエイティビティが底上げされ、幸せが生まれ、次に繋がります。」この言葉から、クラスター社が目指しているのは単なる金銭のやりとりではなく、感謝や喜びの気持ちが循環し、それがクリエイティビティを底上げする新しい形の経済圏であることがわかります。

ユーザーの不安と加藤氏の回答

「Cluster Conference 2024」では、ワールド内課金要素の例として、cluster内で遊べるゲームへの課金システムなどが紹介されました。近年、クラスターはゲーム要素を前面に押し出す戦略を取っているように見え、多くのユーザーが「clusterはゲームプラットフォームになるのではないか」と不安を感じています。

しかし、加藤氏は次のように説明しています。「僕が考える『ゲーム』は、3DCGやデジタルの力を使って何かしらの面白みを提供する形を総称して『ゲーム』と呼んでいいのではないかと考えています。つまり、課金をしてワールドを作ったクリエイターに感謝の気持ちを伝えやすいフォーマットを、僕は『ゲーム』と言えると思っています。僕らはそういった『ゲーム』を推し進めていくことが、ワールドクリエイターの経済圏を推し進めることになると思っています。」

未来への展望

クラスター社の目指す「バーチャル経済圏」は、まだ始まったばかりです。加藤氏は、「経済は放っておいたらグルグルと回るものではないと考えています。我々がここから何を開発し、何をやっていくか。それは、皆さんが経済活動をできるように全力でサポートすることだと思っています」と述べています。

インターネットの歴史を振り返ると、最初は限られた用途でしか使われていませんでしたが、時間とともにさまざまな用途が生まれ、いまでは私たちの生活に欠かせないものとなっています。同様に、clusterが先駆けとなったメタバース上の経済圏も、最初は限られた用途から始まり、徐々にビジネス、教育、医療など、さまざまな分野での活用が進むことで、新たな経済活動が生まれ、大きな市場へと成長する可能性があります。

結論

クラスター社が描く「すべてのユーザーが経済的にも、精神的にも‘豊か’になる世界」は、メタバースにおける「バーチャル経済圏」の未来像です。今回の「Cluster Conference 2024」をターニングポイントに、その実現に向けて大きな第一歩を踏み出したと言えるでしょう。