声優・坂本千夏、40年目の「らんぽう」を振り返る:歌唱力と幅広いキャラクター表現

声優・坂本千夏、40年目の「らんぽう」を振り返る:歌唱力と幅広いキャラクター表現

声優の坂本千夏さん、40年目の「らんぽう」を振り返る

声優の坂本千夏さんは1982年のデビュー以来、数々の名作アニメの主要キャラクターを演じ、その歌唱力と幅広い楽曲の表現力で知られています。このほど、坂本さんが主人公のらんぽうを演じたギャグアニメ「らんぽう」(1984年、フジテレビ系)が、最終回放送から40年の節目を迎えました。この機会に、アニメソングの中でも特にロックナンバーとして知られるオープニング主題歌「ワープ・ボーイ」の思い出を語りました。

代表作と多様なキャラクター

坂本さんは「となりのトトロ」の草壁メイ、「キャッツ・アイ」の来生愛、「キャプテン翼」のあねご(中沢早苗)、そして「それいけ!アンパンマン」のてんどんまんや「美少女戦士セーラームーンセーラースターズ」の夜天光(セーラースターヒーラー)など、数え切れないほどの人気キャラクターを演じています。元気な男の子や女の子、活発だが少しはかなげな少女など、幅広いキャラクターを演じ分ける能力は、彼女の多才さを示しています。

幅広い歌唱力

坂本さんの歌唱力もまた、その多様性が特徴です。初めて主人公を演じた「フクちゃん」(1982年)の主題歌「ぼく、フクちゃんだい!」のような童謡調から、「ここはグリーン・ウッド」(1991年)の主題歌「ノーブランド・ヒーローズ」のようなニューミュージック系まで、さまざまなジャンルの楽曲を歌い上げています。特に「ワープ・ボーイ」では、アニメファンの記憶に残る超絶シャウトを披露し、その歌唱力は高く評価されています。

「らんぽう」の思い出

坂本さんは「ラジオの公開録音では朝の8時くらいから歌っていました。元気だったんだよね」と当時を振り返ります。また、「らんぽう」の制作会見では、本来は別の人が担当する予定だったが、「歌いたい。歌わせて」とお願いして自分が担当することになったと語ります。作曲は、ロックバンドSHŌGUN時代に「男達のメロディー」「BAD CITY」で一世を風靡し、2009年に死去するまで音楽業界で存在感を示したケーシー・ランキンさんが担当しました。「ケーシーの家で打ち合わせをしました。(収録では)私は力をセーブできないので、ただガンガンに歌っていましたね」と、当時の様子を語ります。

歌への情熱

坂本さんの歌への情熱は、幼少期から始まっています。小学校4年生の頃、親戚の結婚式で水前寺清子の「いっぽんどっこの唄」を歌い、お礼としてお小遣いをもらったことをきっかけに歌にのめり込みました。高校時代はバンドを組み、ヤマハのボーカルメイツでレッスンに励みました。「当時の流行はフォークでしたが、FEN(在日米軍向けラジオ=現AFN)を聴いていて、ソウルが大好きでした」と語ります。アレサ・フランクリン、キャロル・キング、シンディ・ローパー、ジャクソン5らを愛聴し、「結婚式に呼ばれたら『We are the world』を歌って、シンディの『wow wow』のパートも私が歌いました。民謡でも何でも、とにかく歌うことが大好きでした」と、当時の思い出を語ります。

声優としてのキャリア

その後、劇団の養成所を経て、声優としてデビューしました。当初から「歌う仕事は大好き」だった坂本さんは、歌唱力も評価され、声優としてだけでなく歌手としても活躍を続けました。「ワープ・ボーイ」では3段階のシャウトがあるが、テレビ版では最高音のパートはカットされている。しかし、熱心なファンの間では評価が高く、「(声優の)杉山紀彰くんからは、学生時代にコピーしていました、と声をかけてもらいました。とってもうれしかった」と笑顔を見せました。

ケーシー・ランキンさんとの再会

ケーシー・ランキンさんとは、「ワープ・ボーイ」から20年以上を経て、再び一緒に仕事をする機会がありました。「ディレクターだったケーシーは、私のことをすっかり忘れていました。すごくピリピリしていました。そこで私が『ワープ・ボーイ』を歌ったんですけど、と伝えると、急に優しくなったんです」と、当時の様子を語ります。ともに印象に残る仕事だったのだろう。坂本さんは「今になって聴くと、頑張っていたなあと思います」としみじみ。現在でも歌えるのかと尋ねると「カラオケで歌う機会がありましたが、まだ大丈夫でした」と答えつつ「でも体の調子が少し変わって心配になりなした。ステージでずっとあの調子で歌うのは心配だけど、1曲だけなら大丈夫」と語りました。取り上げた坂本さんの各曲はYouTubeでアップされており、その歌唱力に触れる機会はあります。

現在の活動

現在は、草壁メイやてんどんまんを想起させる子供らしい歌声が求められる仕事が多くなっています。一方で、米米CLUBの活動で知られるサクソフォーン奏者・織田浩司さんと縁があり、吹奏楽コンサートに出演しています。また、2020年のライブがコロナ禍で中止になった声優仲間の伊倉一恵と神代知衣とのユニット「GALLOP」の再開を模索するなど、精力的な活動を続けています。

新境地への挑戦

坂本さんは「歌のお仕事は全部大好き」と笑顔を見せつつ「高音で歌うのも楽しいけれど、年齢に応じて低音を響かせるお仕事もやってみたいですね。私が低い声で歌うと『劣化だ』とか言われちゃうかもしれないけれど、今は低音が伸びてきて、男性のような声で歌うことができるようになりました。でも、あまりそこには需要がないんですよね」と少し寂しそうに語りました。積み重ねたキャリアを大切にしつつ、新境地となる歌声を響かせる日を、坂本さんは心待ちにしています。