2.5次元の誘惑:コスプレと熱血青春の融合 - アニメ化への道と岡本英樹監督の挑戦

2.5次元の誘惑:コスプレと熱血青春の融合 - アニメ化への道と岡本英樹監督の挑戦

2.5次元の誘惑:コスプレと熱血青春の融合

「2.5次元の誘惑(リリサ)」は、集英社のマンガアプリ「少年ジャンプ+(プラス)」で連載中の橋本悠さんのラブコメディーマンガが原作のテレビアニメです。この作品は、コスプレを題材とした「熱血青春コスプレ」マンガとして知られており、女性キャラクターの可愛さが話題となっています。しかし、その魅力は「可愛さ」だけでなく、「熱血」な要素にも大きく寄与しています。アニメでは、どのようにこの「可愛さ」と「熱血」が表現されているのでしょうか?監督の岡本英樹氏に話を聞きました。

作品の概要

「2.5次元の誘惑」は、現実の女性に興味がなく、2次元のキャラクター・リリエルを愛するマンガ研究部部長の奥村正宗が、3次元女子・天乃リリサと出会い、コスプレーヤーの情熱や思いに触れ、苦難を乗り越え成長していく姿を描いています。2019年に「少年ジャンプ+」で連載を開始し、その独特の世界観とキャラクターの魅力で多くのファンを獲得しました。

アニメ化への道のり

アニメ化を企画したADKエモーションズの実松照晃プロデューサーは、この作品を「熱血マンガ」と評しています。「可愛いだけじゃないんです。絵がすごくうまい先生なので、これをアニメ化するには根性がいる。内容はジャンプの王道ではあるのですが、主人公がオタクということもあり、このオタク感がどう伝えるかも難しいところです」と、一筋縄ではいかないと考えていたそうです。

そこで、白羽の矢が立ったのが岡本英樹監督です。実松プロデューサーは岡本監督について「そんなところまで!となるくらい、とにかくこだわる人です」と語ります。岡本監督は「D.C.II ~ダ・カーポII~」「このはな綺譚」「マナリアフレンズ」などを手掛けたことで知られています。

岡本監督の視点

岡本監督は、松倉友二プロデューサー(J.C.STAFF)から「コスプレものなんだけど……」と言われて、原作を読み始めました。「松倉とはほぼ同期で、付き合いも長いので『お前なら分かるだろう!』という感じで、あまり説明はされなくて(笑)。読み始めると、アニメ化した際に、どう落とし込めばいいのか最初は見えてきませんでした。ただ、コスプレイベントに出るエピソードになってくると、熱い部分が見えてきて、熱血を主軸にすることを考え始めました」と語ります。

岡本監督自身も高校時代にアニメ研に入っており、コミケに参加した経験があるため、現場の熱量を理解していました。「そこに共感してもらい、独特の熱気に興味を持っていただけるようにしようとしました。先生もコミケなどを経験されていることは読んでいて分かりましたし、そこをしっかり伝えることができれば、現場に行ったことがある人に共感してもらえるし、知らない人には、こんな熱い場所があるんだ!と興味が湧いてくるはずだと考えていました」と語ります。

細部へのこだわり

岡本監督自身もミリタリーマニアで、カメラが好きなどオタクであることから、共感できる部分がありました。「ジャンルは違っても興味の持ち方は変わらないはずです。どこをリアルに表現するかが大切になってきます。マニアが見た時に『これは違う……』と感じると、冷めてしまいます。もちろん、アニメなのでウソもあるのですが、リアルな部分をしっかり描いていれば、見た人が冷めずに、共感してもらえるはずです。共感してもらえれば、作品を好きになる一つの大きなきっかけになると思います」と語ります。

コスプレのリアルを表現するために、岡本監督は数々のコスプレイベントを訪れ、取材を重ねました。「コスプレイベントの雰囲気、作法、取り巻く環境、カメラマンたちがどういう機材を使って、コスプレーヤーとどう向き合っているのか?コスプレーヤーやカメラマン以外の参加者はどういう目で見ているのか?そこをしっかり描くことができれば、リアリティーを表現できると思っていました。コスプレを撮影している際のカメラのシャッター音も録音しました。カメラは、メーカーや機種によってシャッター音が違いますし、聞く人によってはそれが分かります。例えば、キヤノンのカメラが描かれているのに、ソニーのシャッター音が鳴っていたら、知っている人は一瞬、うん?となります。分かる人には分かるんです。それではリアリティーが損なわれてしまいます。説明はしていませんが、そういう共感できるポイントを作ろうとしました」と語ります。

キラキラした世界の表現

「2.5次元の誘惑」は、リリサをはじめキャラクターがキラキラしています。「イメージ、背景もなるべく原作を再現しようとしました。アニメに落とし込んだ時にどうすればよりきらびやかに見えるのか?撮影と美術に相談して、微妙に動かして光を入れてみたり、逆に動かないようにしたりして、カットごとに感情の重さ、大きさが違うので、それに合わせて微妙な動きを調整しています」と語ります。

抜群のスタイルのキャラクターも多く登場します。「原作がそうなのですが、スタイル、全体のバランスがすごくいいんです。実際、コスプレーヤーの写真にしても、露出度が高くても、いやらしく見えるのではなく、格好よく、キレイに見えることがあります。もちろんセクシーなのですが、美しい一枚の絵のようにも見えます。そこを大事にしようとしました。ポーズや表情を変えるタイミングがあって、カメラマンがカメラを構え、一番いい表情、ポーズでシャッターを切るリズム感も出そうとしました。コスプレも撮影も全ては表現です。そこを大事にしたかったんです」と語ります。

コミケへの挑戦

アニメは2クール目に突入し、リリサたちはコミケに初参加することになります。コミケは同作における大きな見せ場の一つです。「2クールないと表現できないことが多い作品です。前半はじっくりキャラクターを深掘りして、10話以降くらいからテンポが上がっていきます。練習試合から地区大会、全国大会……と駒を進めるように、どんどん大きくなっていく中で、夏コミをしっかりと夏コミとして描こうとしています。もちろん人間ドラマが主体ですが、物語をしっかり支えるための土台となるリアリティーをしっかり表現していきたいですね。コミケに参加したことがある人は初めての時のことを追体験でき、行ったことがない人は、こんなに熱い現場があるんだ!と感じていただけるようにしようとしています」と語ります。

結論

実松プロデューサーの「とにかくこだわる人」という言葉の通り、岡本監督は細部までこだわり抜き、「2.5次元の誘惑」をアニメ化しています。アニメでも熱く、暑いコミケが丁寧に描かれるはずで、コスプレの世界に興味がある人、ない人問わず、楽しめる作品になること間違いなしです。