Japan Eyewear Holdings: 鯖江の職人技術を活かした世界展開

Japan Eyewear Holdings: 鯖江の職人技術を活かした世界展開

日本発のメガネブランドとして世界市場を切り開く

福井県鯖江市に本社を置くJapan Eyewear Holdingsの代表取締役社長、金子真也は、2023年11月に東証スタンダードに上場を果たした理由を次のように説明する。同社は、メガネの企画から製造、卸、小売店販売まで一貫して行う。分業制が盛んな鯖江では、製造小売り(SPA)企業として稀有な存在だ。

企業の歴史と統合

2021年、金子眼鏡と鯖江産のメガネを扱うブランド「999.9(フォーナインズ)」が経営統合し、新たなスタートを切った。2024年1月期の単価は、「金子眼鏡」が7万3000円、「フォーナインズ」が7万9000円で、メガネの世界三大産地の一つである鯖江の熟練したクラフトマンシップによる高品質、高価格帯が特徴となっている。上場後初の連結決算である2024年1月期は、売上高が前期比26%増の135億円、営業利益は同約1.7倍の37億円、純利益も同4倍の23億円と高成長を記録した。

鯖江の職人技術を活かしたビジネスモデル

「鯖江には世界に誇る『職人の技術』があります。一気通貫のビジネスモデルで、技術を守り、価値を直接伝えることが重要です。現在83店舗を展開する『金子眼鏡』では、高級感と居心地の良さを両立させたこだわりの店舗デザインと、優良立地への出店が功を奏し、売り上げの約9割を直営店で稼ぎ出しています」と金子は語る。

金子眼鏡の歴史と転換

金子眼鏡の創業は1958年。父・鍾圭が始めたメガネの卸販売から事業を大きく転換したのは、2代目の真也だ。1998年には直営店を開き、小売り事業に参入。2006年までに自社製造を開始し、2009年には鯖江に自社工場を設立した。200以上の製造工程を分業することで、コストを抑えて成長してきた産地の特性があるが、後継者不足により担い手がいなくなる可能性を考え、生産の内製化に取り組んできた。さらに職人の負担を減らすために、業界でもほとんど行われていない粗磨きの工程でロボットを導入。伝統ある職人技だけでなく、最新技術も取り入れながら産業を支えている。

生産の内製化と新工場の建設

金子眼鏡は現在、鯖江に3カ所の自社工場を抱え、2024年1月期には10万本を製造した。上場時に資金調達した約17億円を元手に、2024年末には第4工場が竣工する予定だ。「統合シナジーとして、金子眼鏡の自社工場を活用し、フォーナインズの内製化にも取り組んでいく」と金子は語る。

今後の成長戦略

今後の成長戦略として主に掲げているのは、両ブランドの国内新規出店やノウハウの共有による統合シナジー、そして「世界展開」だ。現在、金子眼鏡ではフランス2店舗と中国で2店舗、フォーナインズでシンガポールに1店舗の直営店を運営している。2023年4月に開店した上海の直営店も好調で、香港や台湾などにも出店し、早期に海外売上高比率を50%以上に高めたいとしている。さらに、「アジアで盤石の体制を築き、2030年代にはヨーロッパでの店舗拡大を目指す」と展開を見据えている。

産地の未来への願い

金子が長年、抱え続けてきた「産地が縮小し、職人がいなくなっていく状況をどうにかしたい」という願い。上場と世界市場への展開は、その実現に近づく大きな一歩になるのではないか。

金子真也の経歴

金子真也は1958年生まれ。中央大学卒業後、金子眼鏡に入社。職人の名前を冠した自社ブランドの眼鏡フレーム「職人シリーズ」などを展開し、1999年に代表取締役社長に就任。2022年にフォーナインズ取締役に就任し、2023年5月にはJapan Eyewear Holdings代表取締役社長に就任した。

金子真也のリーダーシップの下、Japan Eyewear Holdingsは、鯖江の職人技術を世界に発信し、産地の発展に貢献する企業として、着実に成長を遂げている。