VTuberの新潮流:現実とバーチャルの融合がもたらす新たなエンターテイメント
VTuberの新たな潮流:現実とバーチャルの融合
VTuber(バーチャルYouTuber)は、その名の通り「バーチャル空間にしか存在しないキャラクター」としてブランディングされることが多かった。しかし、最近ではその風潮に大きな変化が生じており、現実と地続きな世界で活躍するVTuberが増えている。
あおぎり高校:実写を取り入れた企画で話題
チャンネル登録者数100万人超えのVTuberグループ「あおぎり高校」は、積極的に実写を取り入れた企画によって大きな話題を集めている。例えば、実写で撮影したメンバーの「手」が誰のものか当てる企画や、「1万円でより遠くに行った人の勝ち」の外ロケ企画など、コンスタントに数十万再生を記録している。さらに、メンバーの音霊魂子は5月に3Dモデルの新衣装お披露目配信を行う際、本人が新衣装と似た服で登場する「実写パート」を設けていた。
深層組:実写と3Dの融合
尖った配信スタイルで知られる「深層組」も実写を上手く取り入れている。従井ノラを始めとしたメンバーたちは、「超美麗3D」という体裁で外ロケ企画を行っている。さらに、リアルイベントでは、着ぐるみに身を包んだ演者たちと触れ合えるのが同グループならではの特色だ。
おめがシスターズ:部位チューバーの先駆者
実写の動画や配信では生身が映り込むことも珍しくないが、そうした路線を開拓してきた第一人者としては「おめがシスターズ」の名前が挙げられる。2018年から活動している古参のバーチャル双子ユーチューバーだが、ある時期からは「部位チューバー」へと方向転換。これは顔だけ3DCGでカラダは生身という斬新な配信スタイルだ。
その自由度を活かして、2人で釣りに出かける動画や店舗まで実際に足を運ぶ実写グルメ動画など、さまざまな企画に挑んでいる。つい先日には、握手会や記念撮影を盛り込んだ日帰りバスツアーの企画も発表された。
ぽんぽこちゃんねる:外ロケの先駆者
「ぽんぽこちゃんねる」で活動する甲賀流忍者!ぽんぽことピーナッツくんの2人は、活動歴5年以上の古株VTuberだが、ある時期からは外ロケ動画を積極的に出すようになった。国内外の観光地に訪れる旅行系の企画のほか、「ド田舎から路線バスに乗ってどこまでいけるのか?」、「運動不足でも自転車で淡路島一周することはできるのか?」、「相方に気づかれずにニューヨークまで着いていくことはできるのか!?」といったユニークなお出かけ企画で視聴者を楽しませている。
ただし、「おめがシスターズ」とは違って「部位チューバー」ではなく、モバイルモーションキャプチャーの「mocopi」を使うことで、3Dモデルを現地の風景の上に表示させているのが特色だ。
にじさんじ:実写を取り入れたVTuber
大手VTuberグループの「にじさんじ」でも、実写を取り入れたVTuberが登場している。月ノ美兎は「mocopi」を使ってさまざまな場所で外ロケを行う一方、加賀美ハヤト・剣持刀也・不破湊・甲斐田晴によるユニット「ROF-MAO」は、無人島サバイバルや日本全国サイコロ旅、農業などの企画を行ってきた。
りきゃこ:新しいスタイルのVTuber
8月にデビューした大型新人VTuber、「りきゃこ」の存在も見逃せない。人気声優・逢田梨香子の「分身」として位置づけられた存在だが、本人とかけ離れたガチガチの設定が用意されているわけではない。これまでも声優のVTuber化は多かったが、設定がゆるめでファンの間で暗黙の了解ができているという意味では、新しいスタイルかもしれない。
新時代の幕開け
VTuberの開祖・キズナアイが真っ白な背景の「バーチャル空間」から視聴者に語りかけていたことを思うと、こうした最近のブームには隔世の感がある。とはいえ、どんな文化にも変化は付き物。VTuberがバーチャル空間だけの存在ではなく、リアルと地続きに生きている存在になったことで、また新しい時代が始まったと言えるだろう。
この新たな潮流は、VTuberの可能性をさらに広げ、視聴者との距離を縮め、よりリアルで多様なコンテンツを提供することができる。今後も、VTuberの進化に注目が集まるに違いない。