VTuberやVアーティストの音声合成ソフトが続々登場する理由:しぐれうい、犬山たまきらも参加で話題
2025年に向けてイラストレーター/VTuberのしぐれういのAI歌唱ソフト「VoiSona 雨衣(うい)」のリリースが発表され、大きな話題を呼びました。このソフトウェアは、株式会社テクノスピーチが2022年9月に提供を開始した音声創作ソフトウェア「VoiSona」の一つで、CeVIO AIの姉妹ブランドとして位置づけられています。
音声合成ソフトの歴史を振り返ると、ヤマハが開発したVOCALOIDは、初音ミクをはじめとする多くの人力 Vocaloid曲を生み出し、シーンを大きく変えました。最近では、2023年4月に株式会社AXSが発表した「Synthesizer V AI 重音テト」も大きな影響を与え、ネットシーンで多くの作品が生まれています。
特に、2021年7月にはクリエイティブレーベル KAMITSUBAKI STUDIOが株式会社テクノスピーチを中心とした企業が開発したCeVIO AIとコラボして、バーチャルシンガー・花譜の声を元にした音楽的同位体可不(KAFU)が作られました。代表的な楽曲には、ツミキの「フォニイ」や柊マグネタイトの「マーシャル・マキシマイザー」などがあり、ユーザーの発想から「可不がカレーうどんを食べるだけ」のイメージが広がり、N次創作が広まったことで、可不の存在の大きさが際立ちました。
2022年以降、KAMITSUBAKI STUDIOのバーチャルアーティストグループ V.W.Pのメンバー4人の音声合成ソフトも順次リリースされ、2023年には活動休止中のキズナアイの歌唱特化型AI「#kzn」、2024年にはVTuberの犬山たまきの歌声合成ボイスライブラリ「玉姫」もVoiSonaから発表されました。これらの音声合成ソフトは、VTuberやVアーティストの個性的な声を活かし、音声合成ソフトが多くの話題を生む理由ともなっています。
VTuberやVアーティストの音声合成ソフトの多い理由は、彼らの音楽活動とボカロシーンとの文化的親和性にあります。VTuberやVアーティストが歌う楽曲は多くの場合、ボカロ曲を中心とし、多くのボカロPが彼らのオリジナル曲を制作しています。この相乗効果によって、両シーンの発展が相互に促進され、新しいトレンドが生まれています。
さらに、Live2Dモデルや3Dモデルといったハイテク技術で作られるデジタルキャラクターと、深層学習などの最新AI技術を用いた音声合成ソフトとの相性が抜群で、メタバースやWeb3などの最先端技術の開発にも対応しているKAMITSUBAKI STUDIOの音楽的同位体プロジェクトは、その象徴です。
デジタルキャラクターのビジュアルと音声合成ソフトのビジュアルがシンクロすることで、花譜と可不のような「キュートなカノジョ」のような作品も生まれます。今後、それぞれのビジュアルがどのように絡み合い、シナジー効果を生むかは、SFチックなデジタルの特性が表現の多様性を無限に広げる大きなポイントとなりそうです。
ネット発のボカロ、VTuberやVアーティスト、音声合成ソフトなどの存在が、デジタル領域で繋がり、サイクルが勢いづいています。AIが人の仕事を奪うのではなく、人がAIをうまく活用することでさらなるテクノロジーの進化が期待されます。この流れの中で、シーンを加速させる新しいカタリストが生まれることを楽しみにしています。