「あの」から「トップスター」へ：YouTubeチャンネル「あのちゅーる」が示す独自の世界観とその爆発的な成功

あの、地下からトップスターへ

いまやメディアで見ない日はないほどトップスターの仲間入りを果たした、あの。アイドル「ゆるめるモ！」の時代を知っている一人として、過去の自分に「2023年からあのちゃんが芸能界を席巻するよ」と言っても絶対に信じないだろう。

それほど良い意味で地下の住人だったあのが、なぜここまでブレイクすることができたのか、彼女が2024年2月から始めたYouTubeチャンネル「あのちゅーる」を見れば、その一端を知ることができる。

記念すべき第一弾動画

記念すべき一発目に投稿されたのは、わずか3分弱の自己紹介動画だ。しかし、ほかのYouTuberの動画とは明らかに「違う」光景がそこには広がっていた。

「あのだ……YouTubeはじめていくだ……あのちゅーる……です……（ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……）これは……これから不定期ですが……動画……あげていく……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……）時間も曜日も特に決まっておりません……スタッフも……どこにもいません……ゼロ人……編集も……自分でやってみる……です……（ッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……ズッチャッ……）YouTubeは前からね……やろうと思ってたんです……でも時間かかっちゃいました（あのちゅーる……あのちゅーる……あのちゅーる……あのちゅーる……あのちゅーるなのだ…）このたび……新品のパソコンとかも買っちゃったよ……パソコンのパスワードは……ano0904です……（略）」

独自の世界観

いかがだろうか。別撮りしナレーション形式で声を当て、さらにBGMもボイスパーカッションで鳴らしながら世界観を演出する。そしてその間、あの本体は自由に動き回るのだ。見ている映像と頭に鳴っている音がまったく違う。それによって、まるで「あのに脳内に直接語りかけられている」かのような錯覚に陥ってしまう。ボイスパーカッションと共に挿入される（あのちゅーるなのだ……）という語りかけによって、圧倒的な中毒性のある動画に仕上がっていた。

あのの魅力

仮にほかのYouTuberや芸能人が同じ手法でYouTubeを撮影しても成立しないだろう。そこに「あの」の凄さがある。一番はその「声色」だ。舌足らずで鼻にかかったその声は好き嫌いが分かれるかもしれないが、クセになる唯一無二の個性的な声。特筆すべきは、滑舌の良さだ。2023年を代表する楽曲となった『ちゅ、多様性。』でも感じたことだが、独特な歌声、声色を持っているボーカリストは言葉や歌詞が聞き取りにくいことがある。しかし、あのはサビで「ゲロチュー（get on chu）」と繰り返す、ノリ、リズム重視の楽曲でも、それ以外の歌詞はしっかりと聞き取ることができる。だからこそ、ここまでのヒット曲となったのではないだろうか。そしてそれは、YouTubeでも変わらない。いっさい字幕が挿入されていないにもかかわらず、ほとんどの言葉を一発で聞き取れる滑舌は彼女の大きな魅力だ。

独特のビジュアル

そして、ほぼ「なにもしなくても」画が持ってしまうビジュアル。ただ、そこにいるだけで目を奪われてしまう。何度も再生してしまう。ほかのYouTuber、芸能人は商売あがったりだろう。本当に恐ろしいYouTubeチャンネルが爆誕してしまった。

そしあのの魅力

そんなあのちゅーるのなかで一番の再生数を誇るのが、霜降り明星の粗品を家に招いた動画だ。テレビ東京の音楽トークバラエティ『あのちゃんの電電電波』をはじめ多数の共演経験があり、その仲の良さから「そしあの」と呼ばれる二人。粗品とのコミュニケーションには公開からたった4ヶ月で再生数は400万回を超えるなど、いかにこのそしあのに世間が注目しているのかがわかる。たびたび「人が嫌い」と自称しているあのだが、粗品には自由にボケ、自由にツッコまれる傍から見れば「理想」としか言いようがない関係性を築いており、この動画でも開始2秒からボディタッチをし、両ファンを狂喜乱舞させていた。

二人のやりとり

特に中盤、あのの私物である『ケロロ軍曹』のキャラクターのパペットを二人で動かすくだりで、

あの「ギロロとタママが好きです。こんにちは」粗品「んっ、ちょっ、ちっちゃいな…あっ、こう？　手ぇどうやって入れんの？」あの「こうやって入れる…」粗品「チッ、クソが」あの「できないならいい！」粗品「（手にハメながら）こんにちは～」あの「はい、おつかれ」粗品「なんやねん…俺、そのタママで抜いたことあるよ」あの「キモっ」粗品「お前がな」あの「キモっ」粗品「お前やん」

という、「なにを見せられているのか」という困惑と「一生このやりとり見ていたい」という興奮が入り混じった、この二人にしかできないトークが展開されていた。ちなみに、粗品の個人YouTube「粗品 Official Channel」では二人の熱愛説についての動画が公開されているのでぜひこちらも合わせてチェックしていただきたい。