清水エスパルス、横浜FCとの天王山戦で同点に追いつき、J1昇格に一歩

清水エスパルス、横浜FCとの天王山戦で同点に追いつき、J1昇格に一歩

清水エスパルス、横浜FCとの「J2天王山」で同点に追いつく

9月28日、J2リーグ第33節が開催され、首位の清水エスパルスと2位の横浜FCが「J2天王山」の一戦を国立競技場で戦った。この試合には、J2歴代最多となる5万5千598人の大観衆が詰めかけ、両チームの激しい戦いが繰り広げられた。

守備重視の試合運び

清水エスパルスは、いつもの4-2-3-1のシステムを採用したが、守備時には2列目右サイドの西澤健太が下がって5バックの形を取る。さらに、左MFのルーカス・ブラガがダブルボランチの左へ、1トップの北川航也が右へポジションを下げ、最終ラインの前にも4枚のブロックを敷く。この戦術により、清水は横浜FCの3-4-2-1のシステムとマッチアップし、リスク管理を徹底して試合に臨んだ。

前半は0対0で折り返した。横浜FCの四方田修平監督は、「清水さんが堅く入られたため、前からガツガツ来られず、背後への狙いが出せなかった。下がられた後で自分たちの攻撃が行き詰まる部分があった」とコメントしている。清水は失点を覚悟するような場面を作らせることなく、前半を終えることができた。

攻撃の迫力不足

一方で、清水の攻撃は迫力を欠いた。攻撃のスタート地点が低くなる傾向があり、MF乾貴士を経由しないとなかなか前進できない状況が見られた。2列目の3人と1トップの北川が有機的に関わり、両SBの原輝綺と山原怜音が飛び出していくいつもの迫力が影をひそめてしまった。

北川は試合後、「右へケアへいっているぶん、前線へ入るのが遅れたところはあるし、その中でやらなければいけないことはある。ただ、普段やっているような形ではなかなかプレーできなかった」と語った。デザインしたCKから相手ゴールへ迫る場面はあったが、いつもの清水の攻撃力は発揮できなかった。

後半の展開

後半も前半の流れのままに試合が進んでいった。しかし、清水のブロック形成がやや遅れる場面が出てきた。53分には右サイドから侵入を許し、横浜FCのMF井上潮音にフィニッシュへ持ち込まれる危機的な場面が発生した。

清水の秋葉忠宏監督は危機を察知し、55分にMFルーカス・ブラガを下げてMFカルリーニョス・ジュニオを投入した。攻撃力を高める狙いだったが、背番号10の投入が試合に影響を及ぼす前に、スコアを動かされてしまった。

56分、相手のゴールキックから自陣まで侵入され、右サイドのクロスからFW高橋利樹にヘディングシュートを浴びた。このシュートはバーを叩き、跳ね返りをFWジョアン・パウロに押し込まれ、清水が先制点を献上した。クロスを入れられた前の局面から、プレスにいっているものの寄せきれない、相手選手の動きについていけない場面が連続して発生していた。失点は必然だったと言える。

選手交代で同点に追いつく

ビハインドを背負った清水は、早く追いつきたいという意識が強まった。前半は相手のすき間で巧みにボールを引き出していた乾が、前で受けようとする動きを増やし、中盤と前線の距離が開いてしまった。

ここで秋葉監督が動いた。68分、北川、西澤、MF宇野禅斗を下げ、MF矢島慎也、DF北爪健吾、MF宮本航汰を投入した。この選手交代が的中し、74分に清水は同点に追いついた。

右サイドから原が持ち出し、カルリーニョス・ジュニオへパスをつなげ、ボールはサポートした矢島へと渡った。矢島はペナルティエリア内右でターンし、ゴール前へクロスを入れた。このボールに走り込んだ原がGKと交錯し、残ったボールを宮本が押し込んだ。清水らしい得点だった。

1対1のドローで幕を閉じる

清水が同点に追いついた後、さらにたたみかけたいところだったが、横浜FCも交代カードを切って攻撃に変化をもたらそうとした。両チームの意地がぶつかり合った一戦は、1対1のドローで幕を閉じた。

試合後の記者会見に臨んだ秋葉監督は、「前半から失点するまでの戦いぶりが、自分たちらしくなかった」と述べた。しかし、「最低限の勝点1はもぎ取りましたし、劣勢の状況から先制された中で、厚みのある攻撃で同点へ持ち込んだことは評価できる」とも語った。

さらに、「失点してからの攻撃や守備のスタイルを、スタートから出せるように。あれをやるからこそ勝つ確率が上がると思いますし、選手もチームも成長していく。あの獰猛な姿勢、前へいくんだ、ボールを奪いにいくんだ、ゴールへ向かっていくんだ、人を追い越すんだ、というのを、どのような状況でも出せるように」と、チームの成長と改善に向けた意気込みを語った。

J1昇格への道

横浜FCとは勝点1を分け合うこととなったが、翌29日のゲームで3位のV・ファーレン長崎が敗れた。これにより、首位の清水は勝点72、2位の横浜FCは勝点71、3位の長崎は勝点60のままとなった。残り5試合で長崎とは12勝点差となり、次節の結果次第で清水のJ1昇格が決まることとなった。

10月6日開催の次節は、水戸ホーリーホックとのアウェイゲームだ。昨シーズンの最終節と同じカードで、勝てば自力でのJ1昇格を決められる一戦を引き分けで終えた苦い記憶が蘇る。秋葉監督は3試合連続で先制されていることに触れ、「まずは自分たちに矢印を向けて、もう一度どう先制点を奪うのか、奪えないなら奪わせない、というところに注力したい。我々らしくゲームのスタートから、超攻撃的に、超アグレッシブにいけるように準備をしたい」と、チームの原点に立ち返ることを誓った。

J1昇格を手繰り寄せるための一戦は、10月6日にキックオフされる。清水エスパルスの挑戦が注目される。