三浦翔平の鬼気迫る演技が光る!『光る君へ』の藤原伊周とその闇の呪詛

三浦翔平の鬼気迫る演技が光る!『光る君へ』の藤原伊周とその闇の呪詛

NHKの大河ドラマ『光る君へ』で三浦翔平が演じる藤原伊周の、鬼気迫る呪詛のシーンが話題となっている。第37回「波紋」では、伊周が木製の人形に叔父の道長(柄本佑)の名前を書いて刃物で切りつけ、一心不乱に呪詛を行っていた。

伊周が呪う相手、目の敵にしている道長は、娘の中宮・彰子(見上愛)に待望の皇子・敦成親王が誕生した。さらに、道長の依頼を受けたまひろ(吉高由里子)は藤壺で『源氏物語』の執筆に励み、自由に会いに行ける状況にあった。道長は絶好調で、妻の倫子(黒木華)や赤染衛門(凰稀かなめ)から苦い顔をされても気づかないほどだった。

藤壺に盗人が押し入った夜、まひろは彰子を守るために駆けつけた。彰子は無事で、道長はまひろに礼を言った。心を許せるまひろには、道長は本音を漏らし、「これからも中宮様と敦成親王様をよろしく頼む。敦成親王様は、次の東宮となられるお方」とまで口にしていた。

先例に従えば、一条天皇(塩野瑛久)と定子(高畑充希)の皇子・敦康親王が次の東宮になるはずだった。一条天皇もそれを望んでおり、定子亡き後は母親のように敦康親王と過ごしてきた彰子も同じ気持ちだった。

伊周は、敦康親王の後見として、次の東宮は帝の第一の皇子・敦康親王であるべきだと強く主張する。一条天皇はそれを見越して、伊周に道長と同じ正二位の位を授けた。さらに、伊周は道長を挑発するように、「私は第一の御子におわす敦康親王様の後見、左大臣様は第二の御子敦成親王様の後見であられます。どうかくれぐれもよしなにお願い申し上げます」と挨拶した。

敦成親王誕生のときも伊周は必死に呪詛をしていた。道長を呪詛しているつもりが、道長の姉の詮子(吉田羊)が体調を崩してしまい、伊周は激しい呪詛のループから抜け出せなくなっている。

陰陽師・安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)が「自分は今夜死ぬ」と予言した日、道長が見舞いに行くと、「ようやく手に入れましたな。これで中宮様も盤石でございます。いずれあなた様の家からは、帝も皇后も関白も出られましょう」と晴明は言った。ただし、「光が強ければ闇も深くなる」と印象的な一言を付け加えた。

伊周は、中関白家に生まれ、幼い頃から両親の期待を受けて、和歌、漢詩、笛、弓などあらゆる分野に秀で、眉目秀麗だった。若くして父の引き立てにより出世し、妹の定子は帝に愛され、輝くような青年期を過ごした。しかし、父の没後、不遇な状況を受け入れられず、出世する道長に恨みを募らせた。「こんなはずじゃない」という思いは、すべて道長のせいに置き換えられ、弱い自分と向き合えないのはプライドの高さゆえだった。

「長徳の変」で花山院の牛車を弓矢で射たことで、伊周と弟の隆家(竜星涼)が左遷されたときの衝撃は、伊周の心をさらに頑にした。変化を受け入れられない伊周とは対照的に、隆家は自ら大事件を引き起こしても特に反省せず、新しい環境に適応していった。

尊敬する両親から多くの愛情を受け、その期待に応えることでまぶしいほどの幼少期、青年期を過ごした伊周。その光に包まれるような日々が忘れられず、失ったものの大きさ、手に入らないものへの執着にばかり目を向けて生きるのは、どれほど苦しいことか。

三浦翔平は大河初出演だが、美しく気高い平安貴族の光と影、闇までも繊細に表現している。狂気をはらんだ凄みのある呪詛シーンは、私たちの記憶に残り続けるだろう。