伝承地を巡る妖怪探訪家・村上健司氏が解説:『サイレントヒル 2』リメイク版が描く心理的恐怖とその魅力
オリジナル版から23年を経て、『サイレントヒル 2』がPS5をはじめとする最新鋭のゲーム表現で蘇ります。本作は、単なる生存を脅かす恐怖ではなく、心理や人間性の暗闇を描き出すサイコロジカルホラー作品として、現代のホラーゲームに多大な影響を与え、多くのホラー関連のクリエイターからも愛されています。
週刊ファミ通2024年10月17日号(10月3日発売)の『サイレントヒル 2』発売記念特集では、ホラー小説、モキュメンタリーホラー、ARG(代替現実ゲーム)、そしてホラーゲームの実況配信など、多方面で活躍する魅力的な作家・クリエイター陣から寄せられた寄稿文を紹介しています。
村上健司氏は、1968年生まれの妖怪探訪家であり、ライターです。幼少期から妖怪に強い興味を抱き、日本全国の妖怪伝承地を実際に訪れて調査してきました。『妖怪事典』『日本妖怪大事典』『日本妖怪散歩』など、多くの著書を発表しています。
村上氏は、『サイレントヒル 2』リメイク版の映像を初めて見たとき、「あっ、変わってない!」という第一印象を持ちました。グラフィックが大幅に向上し、キャラクターの顔つきも若干異なっているものの、見覚えのあるシーンが多く、「変わっていない」という印象を受けたそうです。
村上氏は、ホラーゲームの魅力について語ります。彼は、クリーチャーや殺人鬼から逃げるだけのゲームよりも、武器を手にして人間ではないものを倒すゲームが好みだと言います。特に「バイオハザード」シリーズがその代表例です。また、単にクリーチャーが登場するだけでなく、暗くてドロドロとした世界観がしっかり作り込まれているゲームに魅力を感じます。『サイレントヒル』シリーズでは、怪しい土着の信仰の影響から人間の内面が具現化する世界設定に強く惹かれています。
ホラーゲームをプレイしていて怖いと感じる瞬間については、村上氏はビックリさせられるのは恐怖とは異なると考えており、実際に怖いと思ったことはないそうです。日常生活で命の危機を感じそうな場面では恐怖を感じるものの、霧が立ちこめる夜の漁港で一人釣り糸を垂れているときでも怖さを感じず、むしろ「お化け出そう!」とワクワクしてしまうそうです。
『サイレントヒル 2』の映像で特に惹かれる部分については、完成度の高い旧版をどのようにリメイクするのかに興味津々です。物語やゲームの進め方に旧版との違いがあるかどうか、旧版での追加シナリオの扱い、そして「サイレントヒル」シリーズの特徴的なエンディングがどのように再現されるのかなど、興味は尽きません。
アートや映像表現、音については、血の表現が秀逸だと評価します。時間の経過でどす黒くなった血の表現にはこだわりが感じられます。音楽に関しては、山岡晃氏の哀調を帯びた旋律が魅力で、特に『サイレントヒル 2』のオープニングで使用される「Theme of Laura」は、切ない気持ちにさせられ、今でも聴くたびに涙が出るそうです。
『サイレントヒル 2』の怪物の表現について、村上氏は「アブストラクトダディ」に興味を持っています。そのクリーチャーが存在する意味が考えさせられると述べています。また、「SIREN2」に登場する「闇人乙式・太田ともえ」も大好きで、かつて人だったもの、人型をした何か、人体の一部を象徴的にデザインしたクリーチャーが好みだと言います。
『サイレントヒル 2』の印象深い思い出については、他のホラーゲームにはない世界観に大はまりし、発売と同時にプレイしたことを語ります。切ないシナリオに胸が締め付けられ、感情を揺り動かされたゲームは初めてだったそうです。
最後に、村上氏は現実に怖い体験についても語ります。小学生の頃、家族四人で同じ部屋で寝ていたとき、夜中に目を覚ますと、蛍光灯の笠の縁に逆さまにぶら下がっているニワトリが見えたそうです。首だけもたげてこちらをにらみつけていたため、恐怖で体が震えたとのこと。しかし、朝になってよく見ると、バスタオルが蛍光灯の笠に掛けられていたことが判明しました。当時は寝るときにナツメ電球を点けていたため、その明かりが気に入らない父親がバスタオルをかけて光を遮っていたそうです。
『サイレントヒル 2』では、現実と非現実を描き分ける際の表現が精緻に表現された街の日常風景が際立っています。PS5でのプレイでは、ドアを開け閉めしたり、クリーチャーを武器で殴打する際のアクションに応じて、DualSenseコントローラーの振動機能でリアルな感触が伝わります。さらに、3Dオーディオ機能による立体的かつリアルなサウンドは、まるで本当にサイレントヒルの街を歩いているかのような臨場感をもたらします。
23年を経て、『サイレントヒル 2』は触感まで含めたホラー表現として、現代最新のPS5だからこそ実現できる体験として帰ってきます。あの霧の街でお会いしましょう。