1984年の革新:トヨタ初代カローラFXとその先進技術
1984年10月、トヨタは「ちょっと気どった2BOX上級生」というキャッチコピーで初代『カローラFX』を発売した。この車は、当時の『スターレット』や『ターセル/コルサ/カローラII』の上位モデルとして位置づけられ、2BOXボディを採用した高級感のあるデザインが特徴だった。
初代カローラFXの開発は、1983年に登場した4代目『カローラ』をベースとしている。この世代のカローラは、FR(フロントエンジン・リアドライブ)系がAE86の『カローラ・レビン』として分岐し、セダン系はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)化された。カローラFXは、これらのコンポーネントを基に開発され、カローラセダンと共通のホイールベース(2430mm)と前後トレッドを採用している。全長はカローラセダンよりも185mm短く、リヤエンドを斜めに切り落とした台形フォルムが特徴的で、スタイリッシュな外観を実現している。
トヨタ車らしい多様なバリエーションが設定され、トップモデルの『FX-GT』はFF・横置きの1.6リットルDOHCエンジン(4A-GELU型)を搭載し、最高出力130ps、最大トルク15.2kg-mを発揮した。その他のエンジンラインナップには、1.6リットル(4A-ELU型)、1.5リットル(3A-LU型)、1.3リットル(2E-LU型)、1.8リットルディーゼル(1C-L型)が用意された。サスペンションは4輪ストラット式で、『PEGASUS』という愛称が与えられていた。
装備面でも、『FX-GT』など上位モデルには7ウェイスポーツシート、エレクトロニック・ディスプレイメーター、オートドライブなどが設定され、高級感と快適性を兼ね備えた仕様となっていた。これらの特徴により、カローラFXは当時の自動車市場で注目を集め、多くのユーザーに支持された。
カローラFXの名称は、Future(未来)と未知数の意味を持つXから由来しており、その名の通り、当時の先進的な技術とデザインを融合させたモデルとして評価された。トヨタの技術力とデザインセンスが詰まったこの車は、1980年代の自動車業界に新たな風を吹き込み、多くの人々に愛され続けた。