菅野莉央が「光る君へ」で左衛門の内侍を熱演、複雑なキャラクターを深く掘り下げる
菅野莉央、NHK大河ドラマ「光る君へ」で左衛門の内侍を演じる
俳優の菅野莉央(30)が、吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜後8:00)で彰子の女房・左衛門の内侍を演じている。主人公・まひろの天敵であり、まひろに藤壺の洗礼を浴びせる存在として、菅野はその役柄について深い洞察を語っている。
「光る君へ」は、千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く63作目の大河ドラマ。脚本は「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などのラブストーリーの名手として知られる大石氏が手掛けている。大石氏は2006年の「功名が辻」以来2回目の大河脚本を担当し、吉高由里子は2008年の「篤姫」以来2回目の大河出演で、初主演を務めている。
菅野莉央は「光る君へ」を視聴者として初回から見ていたという。「まさか自分が参加できるとは思っていなかった。大河ドラマは独特の緊張感があり、セットも豪華で、参加できるのは俳優として非常にありがたい」と喜びを語っている。平安中期の貴族社会を舞台とする今作は、雅な雰囲気を表現するためにセットの細部までこだわり抜かれている。「セットの中にいるとタイムスリップしたように時間の流れがゆったり感じられる」と、菅野はしみじみと語る。
平安時代の雰囲気を再現するために、所作にも細心の注意が払われている。「お仕事の場面では、気持ちは急いでいても動きはゆっくり。内面と動きのギャップが慣れるまで大変でした。『日が暮れるくらいのスピードで』と何度も言われました」と、菅野は指先まで神経をとがらせていることを明かしている。
左衛門の内侍は、まひろに敵意や嫉妬心を向けるキャラクターである。第36話「待ち望まれた日」(9月22日放送)では、まひろと道長(柄本佑)が密会していたことを赤染衛門(凰稀かなめ)に告げ口する場面がある。菅野は「なぜまひろが特別待遇を受けているのか、ずっと疑問に思っていた。2人でいるのを見た時に、『つかんでやったぞ!それ見たことか!』という気持ちが湧いた」と、左衛門の内侍の気持ちを代弁している。
菅野は左衛門の内侍について「自分の仕事に誇りを持っている」と分析する。まひろサイドに立つと意地悪に見えるが、彼女には彰子(見上愛)に長い間仕え、苦労しながら自身のポジションを築き上げた自負がある。それは、彰子が好きな色だと思われていた薄紅色の十二単を着ていることや彰子の前で声をワントーン上げていることに表れている。
「彰子さまが大好きで忠誠心が強い。一条さんのお渡りがあった時は、自分の妹が天皇の気持ちを引くことができた純粋なうれしさがあった。彰子さまの奥ゆかしさや気品、ミステリアスさが凄く人を引き付ける。心の内が読めないからこそ近づきたいという思いがあります」と、菅野は左衛門の内侍の心情を深く理解している。
新入りのまひろは、左衛門の内侍にとって脅威である。第34話「目覚め」(9月8日放送)で、まひろの前で彰子に「そなたはよい。下がれ」と言われたのは大きな屈辱だった。「藤壺でみんなで良しとしてきたルールがまひろによって壊されていく。女性像の変わり目の中で、自分のアイデンティティが崩される、ポジションが奪われる悔しさがある。まひろへの警戒や焦りが告げ口という形で、色濃く態度に出たのだと思っています。これまでの生活やみんなで作ってきたシステムがどうなっちゃうんだろうという怖さがあるのだと思います」と、菅野は左衛門の内侍の心情を詳細に説明している。
菅野莉央は2歳の時に子役としてデビューし、中学1年生の時に「風林火山」(2007年)に美瑠姫(真木よう子)の少女時代役で大河ドラマに初出演した。当時のことを今でもよく覚えているという。同作で主人公・山本勘助を演じた内野聖陽について「気さくに話してくださった」と振り返る。さらに、「『女優さんというのは賢くないとダメなんだよ』と言ってくださった。当時はそんなにピンときていなかったんですけど、今振り返ってみると凄く大事なことを教えてくださっていた。内野さんの言葉がずっと頭の片隅にあります」と明かしている。内野の言葉は15年以上経った今も、菅野の女優人生の指針になっている。
菅野莉央の演技は、左衛門の内侍という複雑なキャラクターを深く掘り下げ、視聴者にその心情を伝えることに成功している。彼女の演技は、平安時代の貴族社会の雰囲気をよりリアルに再現し、ドラマの魅力を高めている。今後も菅野莉央の活躍に注目が集まる。