栁田大輝、鵜澤飛羽が日本インカレで火花!100m栁田、200m鵜澤が制覇

栁田大輝、鵜澤飛羽が日本インカレで火花!100m栁田、200m鵜澤が制覇

日本インカレ100mは栁田大輝が直前のブロック位置変更で完勝

9月19日から22日にかけて、神奈川県川崎市のUvanceとどろきスタジアムby Fujitsuで第93回日本学生陸上競技対校選手権大会(日本インカレ)が開催された。この大会は学生アスリートにとって国内最高峰の舞台であり、特に今夏のパリ五輪に出場したスプリンターたちの激突は見応え十分だった。

100m予選では、パリ五輪200m代表の鵜澤飛羽(筑波大学4年)が7組で10秒25(+0.1)を記録。「しっかり出られて、後半にうまくつなげられた」と、約3年半ぶりの自己ベストに笑顔を見せた。

一方、パリ五輪4×100mリレー予選2走を務めた栁田大輝(東洋大学3年)は、予選2組で10秒33(+0.6)、準決勝1組で10秒34(-0.7)と、いずれも2着通過と精彩を欠いていた。しかし、決勝では前回王者が“覚醒”を遂げた。

「最後のブロック練習をやった時点で今年一番の感覚で動いていたので、『勝てる』と思いました」

栁田は前半でライバルたちを引き離し、10秒09(-0.4)で完勝。井上直紀(早稲田大学3年)が自己ベストの10秒13で2位、山本匠真(広島大学4年)が10秒19で3位となった。鵜澤は10秒28で5位に終わった。

「予選と準決勝はスタートからのっそりした感じだったので、決勝はブロック位置を変更したんです。前足を出して、後ろ足を下げました。そのスタートがうまくハマりましたね」

強力なライバルたちを抑えて連覇を飾った栁田。パリ五輪の4×100mリレーで決勝の舞台を走ることができなかった“挫折”が彼を強くした。

「陸上をやってきて、間違いなく一番悔しい思いをしたのがパリ五輪です。今回は(優勝するのは)厳しいんじゃないかと感じている人もいたと思うんですけど、そんな逆境をはねのけてやろうと思っていました。向かい風で10秒0台は初めてですし、力はついてきているのかな。久しぶりに気持ちいいレースでしたね。うちに秘めていたものが爆発したかなと思います」

一方、予選で好感触をつかんでいた鵜澤は5位に沈み、「いや負けた。みんな速い」と完敗を認めた。パリ五輪は200mで準決勝に進出したが、4×100mリレーの出番はめぐってこなかった。その悔しさを抱えての100m参戦だった。

「パリ五輪のリレーメンバーに選ばれなくて、ずっと納得できなかったんですけど、今日(100mを)走ってみて、実力がなかったことがわかりました。最初から隣の井上君に先行されていたので、相当スタートが遅いんでしょうね。宣戦布告じゃないですけど、ギータ(栁田)と拮抗するかたちになってやっとリレーメンバーに選ばれるんじゃないかな」

200mで鵜澤飛羽が優勝

100mで完敗した鵜澤は、メイン種目の200mで挽回した。準決勝3組では20秒97(-1.5)の3着となり、決勝はカーブの厳しい1レーンに入った。それでもレベルの違いを見せつけて、20秒64(+0.6)で2年ぶりの優勝を果たした。

「自分のせいで1レーンに入ったので、どういうレースをするのかアップ時に考えました。前半から行こうとすると、大きな動きになって、後半はスピードが上がらないことがよくあるので、前半はできるだけ小さく走って、後半頑張りました。ゴールした瞬間はいろんな感情がこみ上げてきましたね」

鵜澤は高校2年時にインターハイの100mと200mを制した逸材。大学1年時の関東インカレ100mで2位に食い込むも、左ハムストリングスに肉離れを起こした。なかなか完治に至らない中で競技を続け、ブダペスト世界陸上とパリ五輪に出場した。苦難と栄光を経験した大学4年間に特別な思いを抱いている。

「最後のインカレは100mとリレーが駄目だったし、決勝を走る予定だったマイルは予選で落ちてしまった。ちょっと寂しいですけど、いい4年間でしたね。本当にいろんなことがありましたから。なかでも2年時の日本インカレのリレーで優勝したのは印象に残っています。チームで応援してもらえるインカレでしか得られない栄養がありました」

鵜澤が2走で出走した4×100mリレー。筑波大学は7位に終わったが、スタジアムは大歓声が響いていた。

4×100mリレーは早大と東洋大が“学生新バトル”

男子4×100mリレー決勝は関東の8校がスタートラインに並んだ。先制攻撃を仕掛けたのが東洋大学だった。2走の栁田大輝(3年)が「パリ五輪より良かったかな」という加速を見せ、トップで第4走者にバトンが渡った。

ホームストレートでは逃げる東洋大学を早大が追いかけた。両者の差はグングンと詰まっていき、最後は井上直紀(3年)が逆転に成功。早大が38秒45の学生新記録で大接戦を制すと、東洋大学も従来の学生記録(38秒54)を上回る38秒47をマークした。

井上は100mの全中王者で、中学時代から同じ群馬の栁田とライバル対決を繰り広げてきた。昨年の日本インカレは故障の影響で欠場したこともあり、4×100mリレーは東洋大学(早大が2位)に栄冠を譲っていた。

今回は個人100mで栁田に敗れたが、準決勝(10秒18)と決勝(10秒13)で自己ベストを更新。自信を胸に“アンカー勝負”に臨んでいた。

「今年はレベルが高く、難しい展開を予想していましたが、『逆転できる』と思っていました。学生記録を取り返しての3冠を狙っているので、とてもうれしいです」

早大は東洋大学の連覇を阻止して、リレー3冠(関東インカレ、日本インカレ、日本選手権リレー)に王手をかけたことになる。そして井上も来年の東京世界陸上で4×100mリレーのメンバー争いに絡んでくるスプリンターだ。

今年の日本インカレで活躍したアスリートたちが2028年ロス五輪を沸かせてくれるだろう。