Wi-Fi HaLow: 到達距離1kmの真実とIoTの新たな可能性

Wi-Fi HaLow: 到達距離1kmの真実とIoTの新たな可能性

2024年7月、WBA(Wireless Broadband Alliance)が「Wi-Fi HaLow for IoT Field Trials Report」というWhite Paperをリリースした。このレポートは、Wi-Fi HaLowの現状と可能性について詳細に紹介している。

Wi-Fi HaLowは、2017年にIEEE 802.11ah-2016として標準化が完了した技術で、ISM Band(Sub 1GHz帯)を使用するWi-Fiである。この帯域を使用することで、従来の2.4GHz帯や5GHz帯のWi-Fiに比べて到達距離が延びることが期待される。しかし、ISM Bandは混雑しており、国によって利用可能な周波数帯が異なるため、スループットには制限がある。

近年、Wi-Fi HaLowの対応製品が増えてきており、Amazonでも見かけるようになってきた。例えば、コンテックのアクセスポイントやサイレックスのアクセスポイントとブリッジが発売され、これらの製品は「到達距離1Km」という特徴をアピールしている。製品数はまだ多くないが、着実に市場に浸透しつつある。

WBAのWhite Paperでは、7つのユースケースを想定してWi-Fi HaLowのパフォーマンスを検証している。これらのユースケースは以下の通り:

  1. Smart Home
  2. Warehouse & Distribution Center
  3. Warehouse & Distribution Center
  4. Smart Farm
  5. Smart Office Building
  6. Smart School Campus
  7. Smart Industrial Complex

まず、Smart Homeのテストについて紹介する。このテストは、CableLabsがコロラド州ブライトンに所有するKyrio Test Houseで行われた。1階の書斎にアクセスポイントを設置し、家の中でのスループットを測定した。結果は、木造の家でも障害物によって信号強度が大きく影響を受けることが確認された。しかし、最低でも3Mbpsのスループットが確保できており、多くのIoTデバイスの通信に十分な帯域を提供できることが示された。

インドアテスト2では、23台のデバイスを用いて、CO2センサー、ドアロック、オーディオ、ガレージドアのアクチュエータ、土壌センサー、ガス漏れ警報器、ガラス破壊センサー、温水器センサー、噴水ポンプ、温度/湿度センサー、気象ステーションなどの用途に割り当て、全てを同時に稼働させた。各デバイスからの平均スループットは50kbps程度で、問題なくIEEE 802.11ahで利用できることが確認された。

アウトドアテストでは、障害物がない場合のカバーレンジが広いことが示された。監視カメラのテストでは、8台のカメラからの映像を640×480ピクセルにダウンサイズすることで、同時ストリーミング受信が可能だった。また、最大到達距離のテストでは、Morse MicroとNewracomのクライアントで430m、Methods2Businessのクライアントで180mの到達距離が確認された。

最後に、IEEE 802.11ah経由でMatterデバイスの操作が問題なく行えることも確認された。AppleのHomeKitを経由してMatterデバイスを操作するデモが行われ、実用性が示された。

WBAのレポートは、少なくとも郊外の一軒家程度であればWi-Fi HaLowが十分に使えることを示している。ただし、家屋が密集した環境や複数のアクセスポイントが設置された場合の干渉については、今後の検証が必要である。