山崎武司の逆転サヨナラ3ランと星野監督への怒りのメッセージ
元中日主砲の山崎武司氏は1999年9月26日の阪神戦で逆転サヨナラ3ランを放ち、ファンを大熱狂させた。この一発は、中日がリーグ優勝に大きく前進するきっかけとなった。試合は8回まで中日が2-1でリードしていたが、9回表に守護神の宣銅烈投手がマーク・ジョンソン内野手に代打3ランを浴び、逆転された。2点を追う9回裏、1死からレオ・ゴメス内野手と立浪和義内野手の連打で一、二塁の好機をつくり、6番・一塁手の山崎氏に回ってきた。1ボールからの2球目、福原忍投手の147キロストレートを捉えた打球はレフトスタンドへ一直線に飛んだ。
打った瞬間に逆転3ランを確信した山崎氏は、両手と両足を広げて大歓喜の“バンザイX立ち”を決めた。続けて三塁側を向いた形で右腕をグルグル回し、振り向きざまに一塁側中日ベンチにその右腕をぐいっと突き出し、吠えてから一塁ベースへ走り出した。その時、発した言葉は「オッサン、ボケー! 俺をちゃんと出しとけば打つんじゃー」。ベンチの星野仙一監督に向けた“怒声”だった。
試合後、山崎氏は星野監督の涙を見て、「俺の胸に飛び込んで来い」って感じにもスルーしようかと思ったが、スルーしたら相当な記事になっちゃうと思い、そうはしなかったと笑う。山崎氏は、ヘッドコーチの島野育夫氏の言葉に救われた。「おい、タケ、星野、アイツ、わややなぁ。お前に散々言っといてサヨナラホームランを打ったら泣いとるんやもんなぁ」という言葉を聞いて、「もういいか」と思ったという。
山崎氏は、星野監督との関係について、「どこまでいっても星野さんにとって、長男は立浪、次男は中村さん、彦野さん、山本さん、今中、福留孝介とか、そういう感じだったから、やっぱりちょっとジェラシーもあったかも」と振り返る。しかし、会心の逆転3ランは忘れられない一発であり、その時に抱いていた感情も今となっては思い出の一部となっている。