『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』: アクションとユーモアが交錯する究極のエンターテイメント
殺しの腕は超一流だが、社会生活ではうまくやっていけない殺し屋コンビの杉本ちさと(髙石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)は、宮崎県での出張暗殺のために向かっていた。さくっと片付く簡単な仕事だと思っていた2人は、バカンス気分を楽しんでいたが、ちさとはまひろの誕生日を思い出した。プレゼントも用意していないと焦りつつ、現場へ向かう2人。しかし、謎めいた男(池松壮亮)が2人より先に標的を追い詰めていた。ちさととまひろは謎の男を排除しようとするが、男の凄まじい戦闘力に圧倒され、バカンス気分の簡単な任務は、過去最悪の難易度に跳ね上がり、2人は壮絶な戦いへ巻き込まれていく。
この作品は、大ヒットシリーズの第3弾で、アクション映画として世界レベルの完成度を誇る。アクションのボリュームは過去2作より明らかに増えており、内容も創意工夫に満ちている。特に冒頭の宮崎県庁でのアクションシーンは、銃撃戦とアクロバットな動きが組み合わさり、観客を驚かせる。さらに、話が進むにつれてアクションが盛り上がり、中盤からクライマックスへと段階的に高まっていく構成は、アクション映画として完璧だ。
池松壮亮の演技も特筆すべきで、髙石あかりと伊澤彩織の主演コンビに劣らず、高い身体能力と貫禄で見事な演技を披露している。また、ユーモアも健在で、髙石あかりと前田敦子のやり取りは微笑ましい。前田敦子は「大人げないけど大人」を魅力的に演じ、池松壮亮は謎めいた最強の男として、狂気を爆発させる独特の悪役を魅せている。
本作は、アクションとユーモアに加えて、新しい領域にも踏み込んでいる。映画全体が、モラトリアムの終わりを予感させる内容になっており、2人が社会の一員としての課題に直面する。これまでの大学生の夏休み的な空気から、新卒1年目の空気へと変化し、物語の結末はシビアな現実を予感させるが、同時にやさしい空気も残している。
『ベイビーわるきゅーれ ナイスデイズ』は、アクション映画、コメディ映画、そしてモラトリアム映画として進化を続けている。日本映画の娯楽活劇の最先端を、是非とも劇場で目撃してほしい。度肝を抜かれ、笑って、ちょっとだけしんみりする楽しい時間が過ごせるはずだ。