パラマウント・アニメーションの成功法則:ラムジー・アン・ナイトー社長が語る『トランスフォーマー ONE』制作秘話と彼のクリエイティブなビジョン【NY発レポート】
ニューヨーク在住のライター・細木信宏が、現地のスタッフやキャストのインタビュー、イベント取材を通じて、日本未公開作品や良質な独立系映画を紹介している。今回は、3DCGで描かれる「トランスフォーマー」シリーズの始まりの物語「トランスフォーマー ONE」に焦点を当て、パラマウント・アニメーションの社長を務める日系アメリカ人、ラムジー・アン・ナイトー氏の単独インタビューが実現した。
ナイトー氏は、父親が日本人、母親がニューオーリンズ出身のアメリカ人で、ニューヨークとボルチモアで育った。10歳の頃から夏休みに日本を訪れ、日本の文化に親しんできたという。芸術家や芸術作品を愛する家庭で育ち、彫刻家である父親と画家の母親の影響を受け、美術学校に通っていた。ボルチモア・スクール・フォー・ジ・アーツ、メリーランド・インスティテュート・カレッジ・オブ・アート、カルフォルニア芸術大学と進学し、サウンド・スカルプチャーやガラスに描いたキネティック・ペインティングを制作していた。日本で「銀河鉄道999」や「ドラえもん」などのアニメに出会い、アニメーターと出会ったことで、アニメーションの世界に興味を持った。
卒業後、友人の紹介でTVシリーズ『ダックマン』の制作アシスタントとして働き始め、アニメ界に入ることとなった。その後、映画『ラグラッツ・ムービー』やニコロデオンの番組、『サウスパーク』、『スポンジ・ボブ』、『ジミー・ニュートロン 僕は天才発明家!』などに携わり、現在の地位を築いた。
ナイトー氏は、ニコロデオン・アニメーション、カートゥーンネットワーク、ブルースカイ・スタジオで社長やプロデューサーとして働いた経験を活かし、パラマウント・アニメーションで独自のスタイルを持たないことを強みとしている。監督と主要なリーダーシップ・チームを中心に、異なるアニメーション・スタジオと提携し、創造性を重視している。『トランスフォーマー ONE』では、ILM(インダストリアル・ライト&マジック)と、『ミュータント・タートルズ ミュータント・パニック!』ではミクロス・アニメーションと提携した。
「トランスフォーマー ONE」は、司令官オプティマス・プライムと宿敵メガトロンの若き日の友情秘話やトランスフォーム能力の起源を描いた作品。監督は「トイ・ストーリー4」のジョシュ・クーリーが務め、若きオプティマス・プライム(オライオンパックス)を中心に展開される。この設定は、プロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナベンチュラの願望から始まり、サイバトロンの全貌を描くオリジナル・ストーリーとして完成した。ジョシュ・クーリー監督は、キャラクターの成長とデザインの進化を重視し、エモーショナルな物語を描いた。
本国版のボイスキャストには、クリス・ヘムズワース、ブライアン・タイリー・ヘンリー、スカーレット・ヨハンソンらが参加。ナイトー氏は、彼らの声の質と演技力に注目し、コロナ禍での制作にもかかわらず、プロフェッショナルな演技を称賛した。特にスカーレット・ヨハンソンの演技は、彼女の演じたキャラクター・エリータ-1が、タフでインスピレーションを与える存在となった。
最後に、ナイトー氏はパートナーである俳優・監督のアレックス・ウィンターについて語った。2人は異なる分野で働くが、お互いをサポートし、クリエイティブなモチベーションを保つ秘訣として、最高の物語を伝えることの難しさを理解し、互いに刺激を与え合っているという。3人の男の子を持つナイトー氏は、子どもたちが成長し、最高の自分になれるように支援し、他の子どもたちにも影響を与える作品作りに尽力している。