ジョン・ホプキンスの新作『RITUAL』:没入型サウンドアートとスピリチュアルな旅路
ジョン・ホプキンスの最新アルバム『RITUAL』は、2年前に参加したプロジェクト「Dreamachine」の体験イベントにインスピレーションを得た作品となっている。このプロジェクトは、光の明滅を利用して見る人の心に色の放出や幻覚を引き起こすアート作品で、60年代にブライオン・ガイシンが発表したストロボ原理の幻覚装置を現代に再現したものだ。
『RITUAL』は、ホプキンスの前作『Music for Psychedelic Therapy』(2021年)や『Singularity』(2018年)と同様に、瞑想やスピリチュアルな探求を通じた形而上学的な関心がテーマとなっている。サウンド的には、引き続きアンビエント/ニューエイジ的なスタイルが推し進められているが、ビートやリズムにはフィジカルに作用する力強さや推進力が感じられる場面も見られる。特に、セブン・レイズ(7RAYS)とイシュク(Ishq)らとのコラボレーションが、アルバムの独特なサウンドに貢献している。
アルバムの収録曲は「part ⅰ」「part ⅱ」……と数字が振られているが、本来は全体の41分間で「一曲」として聴くことを想定している。ホプキンスは、このアルバムを「抵抗をやめて、深い体験に飛び込んで行くための音楽」と表現している。
ホプキンスは、『RITUAL』の制作過程について、直感的なアプローチを重視していると語る。音楽を制作する際には、アイデアやコンセプトを先に考えるのではなく、直感を追ってサウンドを作り、それが次のサウンドの方向性を示唆するという方法を取っている。このプロセスは、まるで建物を築くような感覚で、最終的に40分間のクレイジーな旅路が完成する。
また、ホプキンスは、瞑想やサイケデリック体験といった神秘的で超越的な世界と音楽とのコネクションに深い興味を持ち、その体験を音楽に反映させている。彼の音楽は、リスナーが内面の世界を探求し、精神的な解放を経験するための道具として機能することを目指している。
ホプキンスは、今後の作品について、これまでとは異なる方向性を模索していると語る。次はシンガーやポップ・アーティストとのコラボレーションを予定しており、短い楽曲を作ることに興味があるという。また、音の展示や音楽を使ったインスタレーションにも挑戦したい意向を示している。
最後に、ホプキンスは、『RITUAL』が人々にカタルシスを感じさせ、心の平穏を感じられる場所へと導くことを願っている。彼の音楽は、リスナーが内面の世界を探求し、深い体験をすることをサポートするためのものだ。