サカナクション山口一郎、うつ病と向き合いながらの新たな作曲スタイル:「普通」への挑戦
ロックバンド「サカナクション」のボーカル、山口一郎(44)が10日、自身のインスタグラムを更新し、うつ病との闘いについてつづった。
山口は22年5月に「帯状疱疹」と診断され、7月には極度の倦怠感や疲労状態などの不調が続き、同月いっぱいの休養を発表。バンドの全国ツアーをキャンセルした。その後、SNSを再開し、ラジオなどにも復帰。昨年10月からソロツアーを行い、今年1月のステージで自身がうつ病であることを公表。4月からはサカナクションとして2年ぶりのアリーナツアーを開催している。
山口は札幌に住んでいた頃、窓に暗幕を張り、部屋を夜に偽装して作曲をしていたと振り返る。現在も夜が主戦場だが、うつ病を患ってから新しい制作スタイルに挑戦している。
これまで、どれだけ時間がかかっても部屋から一歩も出ず、Wi-Fi環境を遮断し、集中が続く限り仮眠だけで済ませ、家族や友人、スタッフとも連絡を取らず、孤独に作曲を続けてきた。その過程で生まれた作品の純粋さに、ある種の信仰に近い感覚を抱いていたが、うつ病になってからこのスタイルは非常に困難になった。
薬の副作用で傾眠が起こり、長時間作業をするとウトウトしてしまう。独断で断薬すると、最初は調子が良いが、一度仮眠を取ったり、仕切り直すと、身体的症状や精神的症状が現れ、制作状況が悪化する。また、何日も言葉の宇宙に漂い、ワクワクしながらメロディとリズムの中で隠喩や比喩の旅を楽しんでいたが、現実に戻ると、その倍以上の日数をうつ症状との付き合いに費やすことになり、非常に困った。
そこで、作業方法を変更し、朝から5時間作業し、休憩を取り、また5時間作業し、眠くなったらしっかりと寝て朝起きる。作業内容も、今日は一部分だけに集中し、調子が良ければその先も書く。ダメなら、ご飯を食べたり掃除をしたり、時には運動をしたりする。
この新しいやり方に変えてみて気づいたが、極めて普通だ。良い意味でも悪い意味でもなく、普通だ。何か足りない気がする一方で、満ち足りている感じもする。今までの緊張感はなく、身体的な負荷がなく、充実感がある。もちろん、過度なストレスもあるが、それを凌駕する平穏がある。このバランスがどんな結果を生むのかはわからないが、今はこのやり方を続けてみるしかない。新しい習慣で新しい自分になると決めたと、前向きに記している。