ハンドボール界の雄・植垣健人:空中の格闘技を知に挑むアルバモス大阪の主将
試合中の負傷をものともせず、高い跳躍から力強いシュートを放つ植垣健人選手=9月7日、愛知県稲沢市の豊田合成記念体育館
ハンドボールは、その激しさから「空中の格闘技」とも呼ばれるスポーツだ。全国に拠点を置く男子14チーム、女子11チームがしのぎを削る日本リーグは、今年「リーグH」という名称に生まれ変わった。新リーグ開幕を機に、大阪から約40年ぶりとなる男子チーム「アルバモス大阪」が参入を果たした。
チームを率いるのが最年長で、主将を務める植垣健人選手(33)。姉の影響で10歳からプレーを始め、今年で23年目となる。2013年から強豪チームの大崎電気ハンドボール部(当時)に在籍し、日本代表の経験を持つ。
植垣選手は、生まれ育った地でのプレーをかなえようと大阪に帰ってきた。練習中は銘苅淳監督(39)やチームメートからアドバイスを求められることが多い。植垣選手は「教えているつもりはない。勝ちたいから考えを伝えている。勝つためにチームを良い方向に導いているだけ」と話す。
家庭では3人の子供を育てるお父さんでもある。妻の綾乃さん(34)に「子供が覚えているまでプレーしてほしい」と背中を押され、コートに立つ。引退を考えたこともあるが、家族の存在がプレーヤーとしての原動力になっている。
ハンドボールはマイナースポーツという印象が強いが、その魅力を伝えようと全力でプレーに挑む。「身体能力がすべてではないスポーツ。自分はハンドの世界で能力は低いほう。だがトップでやれている。勉強して知識を蓄え必死にやることで人より点を取れるようになれる」と語る植垣選手。
身体能力で勝てないのならと国内外の試合を見続けることで、自身のプレースタイルを確立した。銘苅監督は「判断力にたけており、周りを生かし自分も得点力がある。ゲームコントロールを安心して任せることができる」と評価する。
開幕2戦はアウェーでの黒星が続いたが、ホーム初戦では多くの声援に後押しされ、待望の初勝利をサポーターとともにつかんだ。「チームの歴史に残る初勝利に貢献できて素直にうれしい。特別な1勝。ただ長いシーズンで見ると26試合のうちの1勝。次に備えて着実に白星を積み重ねる」と振り返る。新天地での挑戦は始まったばかりだ。