『千と千尋の神隠し』の両親は毒親?宮崎アニメの親像と比較
『千と千尋の神隠し』に登場する千尋の両親について、一部からは「親として非常識すぎ」「娘の扱いがひどい」「子供に冷たい」といった声が上がっている。
この映画の中で、父親の運転は非常に荒く、狭い山道を爆走するため、観ている方もハラハラさせられる。家族連れのドライブとは思えない演出だ。母親も娘の千尋の気持ちを無視し、「千尋は車の中で待っていなさい」と言って、娘を残して父親の後を追う。
やがて不思議なトンネルを発見した彼らは、千尋の反対を押し切り、進んでいき、「異界」に到着。そこには美味しそうな食事が並ぶ食堂があった。父親は「そのうち(誰か)来たら、お金を払えばいいんだから」と、勝手に料理を食べてしまった。
この父親像について、作画監督の安藤雅司さんは「野放図で無神経な感じをイメージしていた。娘への愛情は画面からも伝わるが、キャラクターとして典型的な体育会系の人に落ち着いてしまった」とコメントしている。
一方、母親については声優の沢口靖子さんが「子ども思いのお母さんをイメージしていたが、子どもにはあまりかまわず、むしろ旦那さまと恋人気分を楽しんでいる女性だと感じた」と語っている。この「子どもにかまけない」姿勢が、千尋への冷たい態度に映る原因の一つか。
作画監督の安藤雅司さんはさらに、「母親はクールで、家族の和が乱れるところにはいない人。『しっかりしなさいよ』と言いながら、ちゃんと父親についていく。茶パツでイヤリングや口紅をつけて、自分を大切にしている」と説明している。
『千と千尋の神隠し』の両親は、宮崎アニメの他の作品、例えば『となりのトトロ』や『魔女の宅急便』に登場する優しさと慈愛に満ちた両親とは異なり、より個性的なキャラクターとして描かれている。それが子供に対する態度をネグレクトと感じる一因かもしれない。
おそらく、『崖の上のポニョ』の無鉄砲な母親リサは、『千と千尋の神隠し』の父親の性格を受け継いでいる。海沿いの曲がりくねった道路を軽自動車で駆け抜けるシーンは、父親の運転シーンと重なる。これらのキャラクターは、宮崎アニメの典型的な親の像から離れて、強烈な個性を持つようになったと考えられる。