塚原あゆ子監督の成功とその意外な経歴:『ラストマイル』の大ヒット
映画『ラストマイル』の大ヒットと塚原あゆ子監督の経歴
映画『ラストマイル』が公開35日間で観客動員数324万人、興行収入46.3億円を突破(9月26日時点)する大ヒットとなっている。この作品を手がけた塚原あゆ子監督は、丁寧な演出に定評があり、彼女の作品が立て続けにヒットしている。現在、最も新作が期待される監督の一人だが、その経歴は意外な展開をたどっている。
大学卒業後のキャリア
塚原監督は大学卒業後、1997年にテレビ番組の制作プロダクション、木下プロダクション(ドリマックス→TBSスパークルの前身)に入社した。彼女は文学部出身で、就職活動の際には「なんとなくマスコミ系かな」という思いで制作会社を受けていた。強い思い込みや明確な目標があったわけではなく、与えられた仕事に一生懸命取り組んでいた。その結果、プロデューサーや助監督の仕事を経験することになった。
助監督から演出家への道
助監督の経験を経て、塚原監督の演出家としてのデビュー作は2005年のドラマ『夢で逢いましょう』(TBS)だった。その後、ドラマ『夜行観覧車』(2013年)、『Nのために』(2014年)などの話題作の演出を次々と手がけ、15年には優れたTVドラマのクリエイターに贈られる第1回大山勝美賞を受賞した。さらに、ドラマ『重版出来!』(2016年)、『リバース』(2017年)、『アンナチュラル』(2018年)、『MIU404』(2020年)など、多くのヒット作を演出した。
作品のつながり
塚原監督は、監督としてのキャリアのスタートを湊かなえさんの小説原作の三部作(『夜行観覧車』『Nのために』『リバース』)に見出している。特に『Nのために』がなければ、『アンナチュラル』は生まれなかったと語る。『重版出来!』のメイン演出を手がけた土井裕泰監督がサブ演出として塚原監督を呼び、脚本家の野木亜紀子さんと初めて出会った。野木さんは『Nのために』のファンだったことから、オリジナル脚本を書いてくれることになり、『アンナチュラル』が誕生した。その後、『MIU404』で野木さんから『アンナチュラル』の毛利刑事を登場させたいという提案があり、それが『ラストマイル』につながった。塚原監督は、この10年間の作品が地続きでつながっていると感じている。
10月スタートの新作
10月スタートの日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』も野木亜紀子さんの脚本で、塚原監督は野木さんの頭の中にしかない世界をまた少しのぞき見させてもらっていると語る。
天賦の才と努力
塚原監督は、天賦の才があったのかと問われると、「そんな才、ありません。凡人中の凡人ですよ」と謙虚に答える。しかし、人間は何かをやらざるを得ない状況に立たされると、一生懸命勉強したり、アイデアが生まれたり、頑張ったりするものだと語る。仕事を続けるうちに好きになることもあるし、継続してやっていれば、最終的に天職だと思えたら幸せだと考えている。
映画監督としての活動
塚原監督の映画監督デビューは2018年、同名ベストセラー小説を映画化した『コーヒーが冷めないうちに』だった。その後、漫画原作の『私の幸せな結婚』(2023年)、『ラストマイル』が3作目で、木村拓哉主演のドラマの続編『映画 グランメゾン★パリ』(12月30日公開)や、坂元裕二氏のオリジナル脚本による映画『1ST KISS ファーストキス』(2025年2月7日公開)が控えている。
今後の展望
塚原監督は、多作でありたいと語る。今年考えるべきこと、来年考えるべきこと、再来年考えなければいけないことは、たぶん違っているだろうから、1年に映画1本のペースでコンスタントに作品に関わり続けて、エンターテインメントがつながっていくような歯車であり続けたいと述べている。彼女の謙虚な姿勢は、今後も多くの作品を生み出す原動力となることだろう。
塚原あゆ子監督の経歴と作品は、彼女の才能と努力が結実した証であり、今後の活躍がますます期待される。