パリ五輪バレーボール男子日本代表関田誠大、激闘振り返りと新シーズンへの抱負
パリ五輪の激闘を振り返る関田誠大
パリ五輪の激闘を振り返ったバレーボール男子日本代表セッターの関田誠大(30歳)。メダルには届かなかったが、司令塔としての彼の大会はどのようなものだったのだろうか。いよいよ開幕を迎えるSVリーグ。大型補強を敢行したジェイテクトSTINGS愛知を牽引する関田に、新シーズンに向けた抱負を聞く前に、パリ五輪の激闘を振り返ってもらった。
準々決勝の悔しさ
関田誠大が精一杯伸ばした両手の上から、イタリア代表のミドルブロッカー、ロベルト・ルッソが押し込んだボールは、無情にも日本コートに落ちて弾んだ。準々決勝第5セット15-17。激戦に終止符が打たれた。
関田はネットの下で四つん這いになったまま、しばらく動けなかった。
「悔しかった、んでしょうね。東京五輪よりは絶対、もっと上にいけると思ってたんで。気持ちも作っていたし。この3年間、技術でもメンタル面でも、当然成長したというか、成長させていった自分もいたので、その分、悔しさが強かったんじゃないですかね」
記憶を懸命に呼び起こし、関田はそう答えた。
パリ五輪準々決勝・イタリア戦から約1カ月が経っていた。「早いですね」とポツリとつぶやく。
「振り返ると、悔しいという気持ちが一番残っているし、ああしとけばよかったとか、いろいろ考えることもありますけど、ま、そんなこと考えても仕方ないんで……。ただ悔しいなーってことが、強く残っています」
結果だけを見れば東京五輪と同じ準々決勝敗退の7位。だが、ブラジルに力の差を見せつけられ0-3で敗れた3年前の準々決勝とは違う、ベスト4に肉薄した激戦だった。
予選ラウンドの苦難
予選ラウンドは苦しんだ。初戦のドイツ戦は出だしに硬さが出てつまづいた。第1セットを奪われたあと2セットを連取するが、第4セットの接戦をものにできず、フルセットの末に敗れた。第2戦のアルゼンチン戦は3-1で勝利したが、第3戦のアメリカ戦は1-3で敗戦。
関田は「めちゃくちゃ難しかったですね」と回想する。
「初戦の前日の練習まで、アタッカーみんな、めちゃくちゃ調子良くて、すごくいい感じだったんです。でも(試合が始まると)決まんないな、なかなかうまくいかないなと感じて。『どうしようかな』と、ちょっと戸惑いというか、リズムに乗り切れないところがありました。オリンピック自体、他の大会と違う雰囲気だし、気持ちの入り方も全然違うので、やっぱり難しい大会だなと感じた予選ラウンドでした。
チームとしてなんか、“勝たなきゃいけない”というのがあって……。『勝ちたい』という気持ちはもちろんですけど、『勝たなきゃいけない』『結果を残さなきゃ』というのもあったんじゃないですかね。“金メダル”と言って、プレッシャーを自分たちでもかけていたし、いけるだろうという気持ちもあったので、『この予選ラウンドでは絶対勝たないと』という思いで、力は入っていたと思います」
石川祐希の劇的なカムバック
第2戦以降はエース石川祐希(ペルージャ)のスパイク決定率が上がらない中、アルゼンチン戦は小野寺太志(サントリーサンバーズ大阪)、山内晶大(大阪ブルテオン)のクイックを多用して勝利につなげた。アメリカ戦は途中出場の大塚達宣(ミラノ)を活かし、準々決勝進出の条件だった1セットを奪い、なんとか乗り切った。
チームの軸である関田と石川はイタリア戦に臨む前、2人で話をした。そこで互いの意識を確認し合い、練習ではコンビも再確認した。
そうして臨んだイタリア戦で、石川は爆発した。第1セットの7-7から石川が強力なサーブで崩し、関田のトスから石川が立て続けにパイプ攻撃を決め連続ブレイクで9-7とすると、関田は跳びはねながら笑顔で駆け寄り、石川とガッチリ抱き合った。
この試合ではコート内で関田と石川が互いに目を見て話すシーンが多く見られた。会心のスパイクを決めた後、石川が指でOKサインを作りながら満面の笑みを関田に向けた場面も。
イタリアの攻撃に対して守備が機能し、そこから生み出したチャンスを、石川を中心に得点につなげていく。準々決勝にきて初めて、日本らしい戦いができた。
エースの劇的なカムバックに映ったが、司令塔はクールに振り返る。
「いつも通りですよね。上げて決まれば上げるし。決まらなかったら別のとこに上げるし。決まってたんで、どんどん乗せていこうとは思って、彼に託した場面は多かったと思います」
この試合、石川は実に61本ものスパイクを打った。チーム2番目の西田有志(大阪ブルテオン)が34本だったことからも、いかに託していたかがわかる。
日本は持ち味の守備が機能し、決めるべき人が決め、第1、第2セットを奪った。
「『あ、こんなあっさり勝っちゃうのか』って……。でもそんなわけないだろうなとは、3セット目をやりながら思っていた。それでも接戦の中、僕たちはいい流れでラリーを取ったり、ディフェンスしたり、いいプレーが出ていたので、『これはいけるぞー』とは、心の中で思っていました」
日本は第3セットで24-21とマッチポイントを握った。だがやはり、あっさり終わることはなかった。ここからの展開を司令塔はどのように見ていたのか、聞いてみたのだが――。