台風のエネルギーを活用し、人類の未来を照らす「タイフーンショット計画」

台風のエネルギーを活用し、人類の未来を照らす「タイフーンショット計画」

毎年、日本を襲う台風は、その強大な自然の力によって無辜の人々に多大な被害をもたらします。これに対する人類の挑戦が、横浜国立大学の台風科学技術研究センターで進行しています。研究の一環として、台風のエネルギーを有効活用する「タイフーンショット計画」が注目を集めています。

世界トップクラスの研究者から賛辞

「先日、オランダの国際学会でこの計画について発表したところ、世界トップクラスの研究者たちから『あなたたちは相変わらず頭がおかしい。でも、めちゃくちゃ面白い研究だ』と言われました」と、横浜国立大学の台風科学技術研究センターでラボ長を務める満行泰河准教授は笑顔で語ります。

満行氏によれば、「タイフーンショット計画」は、台風のエネルギーをリソースとして活用し、その勢力を弱めるという野心的なプロジェクトです。毎年繰り返される台風の被害を防ぎ、そのエネルギーを有益な形で利用することで、人類を自然災害から守ることを目指しています。

今年の台風10号の被害

今年の台風10号は、特に異常な進路をとり、西日本の一部で長期間停滞しました。この結果、突風や浸水被害が関東地方にも及び、鉄道や航空機の運休、物流の停滞など、経済的な損失も甚大でした。これらの被害を防ぐための研究が、إسلامの重要性をかねてから強調されています。

様々なアイデアの検討

「タイフーンショット計画」では、台風のエネルギーを抑えるための様々な手法が検討されています。例えば、航空機で台風に近づき、氷やドライアイスを散布して気温を下げる方法や、海上に界面活性剤を散布して水蒸気の蒸発量を抑制する方法などがあります。しかし、中でも特筆すべきは、満行氏が推進する「台風発電」のプロジェクトです。

台風発電の仕組みと潜在力

台風発電の基本的な仕組みは、発電船を台風に向かって走らせ、その風を帆で受けて台風の周囲を回ることです。船底に大型のスクリューが設置されており、このスクリューの回転で電力を生成します。台風と同じ方向に常に進むため、長時間の発電が可能になります。

「全長200~250mの発電船を用いて、年間20個の台風をそれぞれ5日間追走した場合、1艇当たり年間3.3億kWhの電力を生成することができます」と満行氏は説明します。これは一般家庭約7万9000軒分の年間電力消費量に相当し、100艇の台風発電船を運用すれば、国内電力消費量の3.6％分が発電できる計算です。風力や地熱発電よりも高い割合です。

将来的な目標と展望

満行氏は、2050年までに台風を利用した産業をつくることを目標に、2030年頃には台風発電船の試作船を完成させることを計画しています。将来的には、台風に並走しながら発電すると同時に水素エネルギーも輸送し、台風によって被災した地域に直接、電気と水素エネルギーを届けることを目指しています。

「5年後の2030年までに部分的な実証試験を始め、2040年までには台風に対する実証試験開始を目指しています」と満行氏は意気込みを語ります。

研究の進展と挑戦

すでに2017年から、研究グループは観測用の小型ジェット機で超大型台風の目に何度も飛び込み、風速や気圧の観測・研究を続けているそうです。これらの観測データは、台風の特性をより詳しく理解し、効果的な発電方法を確立するための重要な基盤となっています。

「台風に果敢に挑む猛者たちにかかれば、実現不可能な絵空事ではないことがわかります」と満行氏は述べます。25年後には、台風が日本人を潤す「干天の慈雨」になるかもしれない―。そんな未来に向け、満行氏のチームは日夜研究を進めていくことでしょう。

この「タイフーンショット計画」は、自然と人類が共存する新たな道を切り開く可能性を秘めています。国内だけでなく、世界中の人々にとっても、台風のエネルギーを利用することで環境負荷を軽減し、持続可能な社会の実現に寄与する重要なプロジェクトとなることが期待されます。