イスラエル軍、レバノン南部へ地上侵攻:ヒズボラとの衝突激化

イスラエル軍、レバノン南部へ地上侵攻:ヒズボラとの衝突激化

イスラエル軍は1日、レバノン南部に地上部隊を侵攻させたと発表した。軍は「限定的で標的を絞った攻撃」だと説明し、国境沿いの村を標的に、イスラエルに対する差し迫った脅威を排除するとしている。地上部隊の支援のため、空爆も実施している。

ガザ地区での戦闘がレバノンにも飛び火し、紛争が拡大した形だ。多数の民間人が巻き込まれる可能性があり、イランや近隣諸国の反発は必至だ。中東情勢はさらに混迷を深めている。

イスラエル軍の声明によると、北部の住民を帰還させるために「あらゆることを行う」と強調。ガザ地区や他の地域での戦闘と並行して行うとした。軍の発表に先立ち、イスラエル政府は治安閣議で「次の段階」の作戦計画を承認していた。

イスラエル軍のレバノン侵攻は、2006年の第2次レバノン紛争以来。地上戦によりヒズボラの戦闘員を国境沿いから掃討する狙いがある。ヒズボラは予備役を含めて4万5000人の兵力を抱え、ガザ地区のイスラム組織ハマスを上回る軍事力を持つとされる。南部の丘陵地帯でゲリラ戦を展開するとみられ、戦闘が泥沼化する恐れがある。

昨年10月、ヒズボラはハマスに連帯する形でイスラエルに攻撃を開始。国境沿いで応酬が続き、イスラエル北部では6万人以上が避難を余儀なくされた。イスラエルは今年9月、北部住民の帰還を「戦争の目的」に加え、ヒズボラへの攻撃を本格化させた。9月中旬にはヒズボラの戦闘員らの通信機器が一斉に爆発。その後、イスラエル軍はレバノン各地に激しい空爆を実施した。

27日には首都ベイルート郊外でヒズボラの中央本部を爆撃し、最高指導者ナスララ師を殺害。戦闘開始以来、レバノン側では1600人以上、イスラエル側では50人以上が死亡している。

ヒズボラは1982年、イスラエルがレバノンに侵攻したのを機に創設された。イスラエル軍はこのとき、地上部隊をベイルートまで北進させ、PLO幹部を追放。その後もレバノン南部で駐留を続けたが、ヒズボラによる攻撃が相次ぎ、2000年に撤退した。

2006年には、ヒズボラがイスラエル兵2人を拉致したことをきっかけに第2次レバノン紛争が起き、イスラエル軍が地上戦を展開。約1カ月にわたって戦闘が続き、イスラエル側で約160人、レバノン側で1100人以上が死亡した。