WRCラリー・チリ: ラッピのバンパー無し走行、驚異のパフォーマンスとタフネス
日本時間9月28日深夜に行われたWRC・世界ラリー選手権の「ラリー・チリ」の競技2日目デイ2では、ビオビオ川の西側エリアに3本のSS(スペシャル・ステージ)が設置され、各2回走行した。特にSS9「マリア・ラス・クルセス」は、地盤が硬く、上面に石がゴロゴロしており、タイヤにとって厳しい路面コンディションだった。
ヒョンデのエサペッカ・ラッピは、過去2回の優勝経験がフィンランドとスウェーデンの森の中でのラリーだった。同じように森林中心のラリーであるチリでは、前日デイ1でヒョンデのエース、ティエリー・ヌービルに対して約6秒遅れの7位につけていた。
しかし、この日のSS9で、ラッピのマシン、ヒョンデi20 Nラリー1ハイブリッドは、フロントバンパーをまるごと失っていた。解説のピエール北川氏によれば、SS7でフロントバンパーを引っ掛けてしまい、フィニッシュ後、バンパーに割れ目があったため「邪魔だ」ということで剥がしてしまったという。
フロントバンパーがない状態ではダウンフォースを得られずにグリップ力が減り、タイムを出すのは容易ではないと想像されるが、ステージ後半の走行シーンを見ると、フェンダーも剥がれ落ちそうな状態になっていた。それでも、ラッピは気合の走りでフィニッシュラインまで辿り着いた。
走行後のインタビューで、ラッピは「石や岩が中に入り込んでしまうが、今のところ大きな問題になっていない」と強気の発言をし、実況陣も笑うしかなかった。日本時間30日未明までの全日程を終え、最終的にラッピはリタイアに終わったが、ラリードライバーらしいメンタルのタフさと頼もしさを感じさせる男に、期待が高まる。