【レポート】星野源、初版12万部突破!『いのちの車窓から 2』発売記念トークイベントで心の声を語る

【レポート】星野源、初版12万部突破!『いのちの車窓から 2』発売記念トークイベントで心の声を語る

星野源が10月1日にHMV&BOOKS SHIBUYAで、『いのちの車窓から 2』(KADOKAWA)の出版記念トークイベントを行った。このエッセイ集は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2014年12月号から始まった星野源のエッセイ連載をまとめたもので、2017年3月に刊行された『いのちの車窓から』から約7年半ぶりの第2巻となる。2017年から2023年までの連載原稿(不定期連載、一部未収録、改稿あり)に4篇の書き下ろしを加えた計27篇とあとがきを収録している。カバーと表紙のイラストは、角川文庫版『いのちの車窓から』と同じくビョン・ヨングンが手掛けた。

イベントには当選したファン約30人が参加し、星野源が登壇すると温かく親密な雰囲気に包まれた。星野は、自身のライブ会場を埋め尽くした観客への感謝を言葉にし、ファンとの繋がりを大切にしていた。フォトセッション後の空き時間もフリートークで和ませ、トークの始まりには「困るでしょ? この近さは困る(笑)」と会場に話しかけ、オンライン視聴者に向けてもカメラ越しに手を振った。

司会を務めたのは、編集・ライターの小田部仁で、星野のメンバーシップサイト「YELLOW MAGAZINE+」の編集を手掛けている。トークはこのふたりだからこその深い内容となった。初版12万部という数字については、「あまり実感がわかないですが、ありがたいです」と星野。すでに手元に届けられた感想については、「佐久間さんや普段お世話になっている方、そして僕の大好きな小説家の米澤穂信さんから素晴らしい推薦コメントをいただきました。そのメッセージが素晴らしくて、本当にしっかり読み込んでくださったんだなと。それをみなさんに届けられるのは、とてもうれしいです」と述べた。

星野の文筆家としてのキャリアは約20年で、その原点は小学生時代の国語の授業だった。「僕、国語の授業が好きだったんです。感想文や作文。だから文章を書く仕事に憧れがあって。趣味でやっていた音楽と役者が20歳以降仕事になって、やっぱり文章も書きたいなって」と語る。エッセイを書く中で、文筆家・星野源は進化していった。「自分にしか書けない文章ってどんなものだろうと。それを追求して、これなんじゃないかと辿り着けたのが、この『いのちの車窓から 2』です」と述べた。

エッセイを書き始めた頃は「面白いものを書きたい」と思っていたが、『いのちの車窓から』に関しては「何も考えない」と言う。「パソコンの前に座って、何書こうかなあ、から始まるんですよ。そういえば、あんなことあったなあと書き始めるけど、オチは見えていない。自分がいちばんスリリング。で、『これどうやって終わるの?』みたいなところから、パーンって急にきれいに決まるときがあって、それがすごく気持ちいいんです」と語る。これは、作為的に何かをしようとしないということだ。

一方で、エッセイは自分の話だから、どうしてもエゴが出てしまう。「そういうエゴを削ぎ落としていく作業をいつもしていて。自分が‘強調したい’思いがあったら、それを削る。強調って欲と似ている。例えば感動したらそれを強調して伝えたくなるけど、(読者は)強調している僕の話を読むだけになってしまう。それをどんどん削ぎ落としていくと、読む人が同じように体験できるということになるんじゃないかと。このエッセイは、そういう書き方をしています」と説明した。

『いのちの車窓から 2』の数ある章の中でも、星野自身は「いのちの車窓から」が特に好きだという。「何かを決めて書いたわけじゃなくて、なんかできちゃったっていう。『いのちの車窓から』というテーマが全部そこに集まってきた。ブワーって。こうだー! みたいな。全然説明になっていないですけど(笑)」と述べた。

最後に、これからの星野源はどこへ向かうのか?「前はやっぱり同時にいろんなお仕事をしたいというのがあったんですけれど、今は一個一個大事にやっていきたいと。音楽にしろ、役者にしろ、文筆にしろ、じっくりやっていけたらと思います」と語った。

20年にわたる文筆業の道程からエッセイの背後にある創作の本質まで、星野源が自身の心の“窓”を見せてくれたような、貴重なトークイベントだった。