「看板の下敷きに」車椅子になったアイドル、猪狩ともかの6年間の奮闘と新たな挑戦

「看板の下敷きに」車椅子になったアイドル、猪狩ともかの6年間の奮闘と新たな挑戦

2018年4月、アイドルグループ『仮面女子』のメンバーだった猪狩ともかさん(32歳)は、都内で強風により倒れてきた看板の下敷きになり、緊急搬送されました。この事故により脊髄を損傷し、両足に麻痺が残ることになりました。

それから6年が経ち、現在も車椅子でステージに立つ猪狩さんは、当時の思いや時間が経って変化した考え方を語りました。事故直後、手術翌日に医師から「脊髄を損傷していて、足が麻痺している」と説明を受けましたが、彼女は脊髄損傷の具体的な症状を知らなかったため、数ヶ月のリハビリで動けるようになると信じていました。

しかし、インターネットで脊髄損傷について調べるうちに、「一生車椅子かもしれない」との現実に気づき、「アイドル活動は続けられないのかな」と不安を感じました。両親は、父が救急救命士だったため、彼女のレントゲン写真を見て状況を悟ったようです。

事故から1か月ほどで、猪狩さんは自身の状態をSNSで発信しました。事務所からは「車椅子に乗っていても仕事はいくらでもあるから、戻ってきていいんだよ」との言葉を受け、メンバーからは「猪狩ちゃんが戻ってくるまで、ステージを守るからね」と励まされました。ファンからの「待ってるよ」という言葉も彼女を支え、再びステージに戻る決意を固めました。

しかし、活動に戻るには多くの困難がありました。メンバーも彼女をどのようにサポートすべきかわからず、彼女自身もどのように助けを求めればよいか戸惑いました。しかし、時間をかけて一緒に過ごすことで、お互いの理解が深まり、彼女がステージ上で物理的に間に合わない場面では、メンバーがフォーメーションを変更するなどの対応をしてくれました。

猪狩さんは、「迷惑をかけている」という気持ちを抱えつつも、「ごめんね」ではなく「ありがとう」と伝えるように心がけています。ダンスの先生や看護師から、「猪狩さんが加わることで新しいパフォーマンスが生まれる」と励まされ、自信を持つことができました。

車椅子でアイドル活動を続けることで、彼女は「車椅子でもゲレンデにこれる」という新たな喜びを見つけることができました。また、車椅子ユーザーとしての視点から、社会の障壁に気づく機会が増え、SNSでの発信も積極的になりました。彼女は、電車の車椅子スペースが健常者に占領されることなど、社会の健常者目線に問題を感じています。

現在、猪狩さんは32歳で、体力面での変化を感じていますが、仮面女子の活動を続けることを目指しています。また、動画編集のスキルを上げたり、コメンテーターや司会のお仕事にも挑戦し、さまざまな分野で活躍したいと考えています。

事故という大きな不運に見舞われながらも、猪狩さんはエネルギーに満ちた言葉で、今後のさらなる活躍に期待が寄せられています。