「秋の風情満点」鉄道芸人ダーリンハニー吉川が選ぶ絶景路線3選
秋は、ローカル線の景色が最も美しい季節だ。お笑い芸人で「鉄道芸人」としても活躍する吉川正洋さん(46)は、2歳から鉄道好きという筋金入りの鉄ちゃんだ。吉川さんが秋の鉄道のトップに挙げたのは、福島県と新潟県を結ぶ「JR只見線」。会津若松(福島県会津若松市)から小出(新潟県魚沼市)まで、全長約135キロのローカル線だ。2011年の豪雨災害で一部区間が不通だったが、2022年10月に11年ぶりに全線開通した。
「景色がごちそうです」と吉川さんは表現する。沿線の紅葉は息をのむ美しさで、特に会津桧原駅(福島県三島町)と会津西方駅(同)間にある第一只見川橋梁は絶景スポットだ。美しいアーチ状の橋から、ゆったりと流れる只見川と紅葉に色づいた山並みが車窓いっぱいに広がる。
列車が橋を渡る時の音にも癒やされるという吉川さん。車内ではずっと車窓からの景色を楽しんでいる。
「何回来ても飽きないですね。景色は季節や時間帯、自分の体調によって見え方が変わるんです。若い時にはあまりピンと来なかった場所でも、年を取ってから訪れると、美しさが感じられることがあります」
次に吉川さんが挙げたのは、神奈川県の箱根山を上る「箱根登山電車」。小田原(神奈川県小田原市)から強羅(同箱根町)を結ぶ山岳鉄道で、標高約14メートルから約541メートルまで上る。車両は窓が大きく、景色を見ることに特化している。紅葉だけでなく、スイッチバックと急カーブがさらに味わい深い体験を提供する。
「スイッチバックとは、列車が坂路を上るために進行方向を変えながら進む運転方式です。箱根登山電車は3回行い、険しい箱根の山々を上っていきます。車両、スイッチバック、急カーブ……。箱根登山電車は、鉄道の魅力がぎっしりつまった『幕の内弁当』のような存在です」
秋の鉄道旅の魅力について吉川さんは、
「ワクワクするけれど、だんだん季節が冬になっていくので、ちょっとだけ寂しい気持ちになります。車窓を見ていると、郷愁を感じます」
最後に吉川さんが挙げたのは「わたらせ渓谷鐵道」。桐生(群馬県桐生市)から間藤(栃木県日光市)まで、約44キロの第三セクターだ。渡良瀬川の渓谷に沿って走り、紅葉が非常に美しい。始発から終点まで、高低差は約550メートルで、紅葉のピークが各所で異なるため、長いスパンで紅葉を楽しむことができる。
「渓谷鉄道」の特徴として、木造の「渋い駅」が多く、途中下車もおすすめだ。特に「神戸駅(群馬県みどり市)」は、黒塗りの木造駅舎で、駅に隣接し、かつて東武鉄道で活躍していた特急車両「デラックス・ロマンス・カー」を活用したレストランがある。
秋の山あい、高い空に風が吹く。
「空気もおいしいです」