森保ジャパンの進化とJ世代の挑戦:新たな競争が活性化する現実
森保一監督が率いる日本代表は、現地時間10月10日に北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でサウジアラビア戦に臨み、3連勝を目指している。今回の招集メンバーでは、E-1選手権以来2年ぶりのA代表となる藤田譲瑠チマ(シント=トロイデン)と、高井幸大(川崎フロンターレ)の負傷により追加で初招集された関根大輝(柏レイソル)が注目を集めている。
藤田は「久々と言っても、このチームは初めてなので、新たな気持ちでできたらいいなと思います。自分にできること、やるべきことは変わらない」と語っている。パリ五輪世代の台頭が期待される中、すでにA代表で主力として定着している久保建英(レアル・ソシエダ)とGK鈴木彩艶(パルマ)がいる一方で、パリ五輪のエースだった細谷真大(柏レイソル)が外れ、9月に初招集された高井も負傷で辞退となった。関根が新たに加わった形だ。
また、パリ五輪のチームには無縁だった大型サイドバック(SB)の望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)も前回に引き続きメンバー入りした。カタールW杯後の“第2次森保ジャパン”では、昨年の上半期に川﨑颯太(京都サンガF.C.)、半田陸(ガンバ大阪)、バングーナガンデ佳史拭(FC東京)が招集されたが、当時はまだ親善試合でチームを再構築している段階だった。
現在の日本代表の構成では、東京五輪世代が大半を占めているが、2021年夏の本大会が行われた時点でA代表経験者は多くいなかった。東京五輪世代で2020年の時点でフルメンバーのA代表に入っていたのは堂安律(フライブルク)、冨安健洋(アーセナル)、そして年齢的にはパリ五輪世代の久保など、かなり少数だった。東京五輪世代は2019年のコパ・アメリカやE-1選手権で経験を積んでおり、A代表経験者は現在のパリ五輪世代よりはるかに多かった。
パリ五輪世代の最年長は23歳で、22歳の藤田や関根も含めて、世界で見たら若手とは言えなくなってきている。しかし、日本の場合は後伸びの選手も多く、東京五輪世代でもその傾向が顕著に出ている。そのため、現時点でのパリ五輪世代の人数はそれほど気にする必要もないかもしれないが、鈴木や久保に続く森保ジャパンの主力に食い込んでくる選手の台頭は、今後の流れにもつながっていくはずだ。
藤田はボランチのポジションで、キャプテンの遠藤航と守田英正がファーストセットで、田中碧が挑む構図となっている。4人目は3-4-2-1の2シャドーと兼任の鎌田大地(クリスタル・パレス)で、旗手怜央(セルティック)もオプションとして考えられている。9月の2試合では遠藤と守田がスタメンで、田中は中国戦で遠藤に代わり途中出場したのみだった。バーレーン戦では守田が途中で浅野拓磨に代わり、左シャドーでスタメンだった鎌田がボランチに下がって終盤を締め括った。藤田は今回のシリーズで、そこに食い込んでいかなければいけない。
森保監督は藤田に6番(守備的MF)の仕事だけでなく、8番(攻撃的MF)の役割も期待している。藤田も「自分は今のチーム(シント=トロイデン)でも、6番的な立ち位置でありますけど、時間帯によって8番の仕事をすることも少なくないので。タイミングで8番になることだったりは全然できるのかなと思います」と主張している。守備の強度を高めつつ、中盤の底からの組み立てだけでなく、機を見て前に出ていけるかが評価の分かれ目になる。
関根は所属チームでは右SBのスペシャリスト的なイメージが強いが、センターバック(CB)が本職の高井に代わって、3バックの右での適性を見られている。187センチの恵まれたサイズがあり、パリ五輪の代表活動で課題に感じたヘディングのクリアも継続して改善に取り組んでいる。関根本人も「大学の時にもやっていましたし、プロに入ってからも天皇杯でCBとして出たことがあるので。そういう部分は問題ないと思いますし、オリンピックも右SBでしたけど、可変で3バックを作ったりみたいなのはやっていた」と語り、意欲的な姿勢を見せている。
望月も右SBが本職ながら、ここ最近は町田でCBを経験しており、今回の代表メンバーの中でもライバル関係に近い存在だ。右ウイングバックは引き続き堂安と伊東純也(スタッド・ランス)、さらに前回は出番のなかった菅原由勢(サウサンプトン)も控えている。望月や関根が出番が回ってくる可能性は低いが、CBも90分出るのが基本のポジションなので、ベンチ入りできたとしても出場はそう簡単ではない。その中でも、しっかりとアピールして評価を上げていけるかが重要だ。
現在の日本代表の構図として、成長の余地がある東京五輪世代がベースになり、一つ上のリオ五輪世代である遠藤や守田、鎌田、伊東、南野拓実(ASモナコ)も健在な中、パリ五輪世代が食い込んでいくのは簡単ではない。しかし、久保と鈴木だけでなく藤田や関根、望月が食い込むことで、新たな流れを作り、競争が活性化していくことを期待している。