シュトラウス『影のない女』、東京二期会が差別要素除いた新解釈で上演
ドイツの演出家ペーター・コンヴィチュニー(79)が、東京二期会のオペラ「影のない女」を演出し、今月下旬に公演される。コンヴィチュニーは、このオペラをオリジナルのまま上演すると女性蔑視の形になるとして、4分の1の曲をカットし、シーンを入れ替え、日本語のせりふを加えるなど、大胆なアレンジを施す。
「影のない女」は、リヒャルト・シュトラウスが作曲、フーゴ・フォン・ホーフマンスタールの台本による作品で、1919年に初演された。物語は、東洋の島々に住む皇帝が霊界の王の娘を皇后に迎えるが、彼女には影がなく、子供ができない。乳母は人間の世界に皇后を連れて行き、子供がいない貧しい染物屋の女房から影を手に入れようとする。しかし、皇后は他人を犠牲にしてまで影を得ることを望まない。結果、皇帝は石に変えられ、皇后の精神の尊さにより奇跡が起こり、皇帝は石からよみがえる。
コンヴィチュニーは、この作品が反社会的であると指摘し、女性が子供を産むことで女性になれるという古い固定観念を問題視。シーンを組み替えることで分かりやすくし、ユーモアを取り入れることで現代的な解釈を加える。また、日本語のシーンを挿入することで、作品に新たな魅力をもたらす。
コンヴィチュニーは1945年、フランクフルト・アム・マイン生まれ。父親の著名な指揮者フランツ・コンヴィチュニーの影響で旧東ドイツで育ち、ベルリナー・アンサンブルで助監督を務めた。80年からオペラ演出を手がけ、ドイツのオペラ雑誌「オーパンヴェルト」で何度も年間最優秀オペラ演出家に選出されている。
「影のない女」の公演は10月24日から27日まで、東京・上野の東京文化会館で行われる。指揮はアレホ・ペレス、出演者は伊藤達人、樋口達哉、冨平安希子、渡邊仁美、大沼徹、河野鉄平、板波利加、田崎尚美、藤井麻美、橋爪ゆかなど。東京交響楽団が演奏を担当する。