運気の波に流されず、能の教えから学ぶ心の在り方
横尾忠則さんは、日常的に運が良いか悪いかをあまり考えたことがないと言います。運は何かの縁によってもたらされるものだと考えています。危機に見舞われても災難にならなかった時は、運が良かったと感じるものの、すぐに忘れてしまうことが多いそうです。
しかし、過去の出来事で運が関与していたと感じる場面もあったかもしれません。最近読んだ『運』というタイトルの本は、「驚安の殿堂」ドン・キホーテの創業者の自伝で、無一文から二兆円規模の企業を築いた人の成功ストーリーです。この人の成功には運が大きく影響していたと書かれています。経営のノウハウが詳しく解説されており、多くの読者がこの人の生き方に従って大金持ちになれる可能性があると評判になっています。
横尾さんはアーティストなので、事業を起こして大金持ちになりたいとは考えていないと言います。思い通りの絵が描ければそれで満足ですが、作品の評価には運が大きく影響しているとも感じています。作品が評価されず売れない場合でも、運が関与しているとは思わないそうです。
能の世阿弥は、人間には「男時」と「女時」があると説いています。男時は勢いがついて何をやっても上手くいく時期で、女時はエネルギーが落ちて何も上手くいかない時期です。男時には積極的に行動すれば大成功し、女時には焦らず休息を取ることでエネルギーを蓄えることが大切だと言います。
不運だと思っている人は、女時に焦ってエネルギーを消耗してしまうため、男時が来た時に活用できないと指摘しています。誰もが男時と女時の両方を経験し、交互に訪れると考えています。労働と休息を適切に区別し、それぞれの時期に合わせて行動することが重要だと強調しています。
例えば、病気になった時は女時だと思って十分に養生すれば、男時が来ると同時に快復すると言います。多くの人が男時と女時を勘違いして反対のことをしていると感じています。
横尾さんは、運を操作するのは遺伝子のようなものだと考えているとも述べています。