「白米ノルマ廃止」「日曜休み導入」…公立校の甲子園出場への挑戦と改革

「白米ノルマ廃止」「日曜休み導入」…公立校の甲子園出場への挑戦と改革

2024年の夏、26年ぶりに甲子園出場を果たした静岡県立掛川西高校の野球部。私立校相手に1勝を挙げ、公立校の躍進を象徴した。2018年から同校を率いる大石卓哉監督(44歳)は、試行錯誤を繰り返し、チームを強化してきた。

当初、選手たちの体重を増やすために白米のノルマを課し、練習前に体重をチェックしていた。しかし、選手たちが食事を苦痛に感じ、体重測定前に水をがぶ飲みしたり、ポケットにおにぎりを入れたりする事態が起きた。大石監督はこの反省から、選手たちが食事を楽しむ方法を模索し、栄養士のアドバイスを取り入れ、正しい知識を身につけた。

練習メニューも変更し、練習の最後は全員で雑談しながらストレッチを行うようにした。これにより、選手たちは心も体もリラックスし、食欲も湧くようになった。また、コミュニケーションを円滑にするために、企業で使われる「slack」も導入し、栄養面や試合・練習の振り返りを可視化できるようにした。

現在、選手たちは週1回「InBody」の数値を計測し、自身の健康状態を把握している。数値は管理栄養士と共有され、選手たちは質問や相談ができる仕組みになっている。

また、火曜日をオフにすることで、選手たちが自由に使える時間を増やした。火曜日の放課後はグラウンドに響く威勢の良い声はなく、選手たちは自宅へ帰る。これにより、選手たちは体のコンディションを整えたり、勉強したり、日々の練習や試合を振り返ったりする時間が確保できるようになった。地元の美容院も月曜定休のため、火曜日がオフになったことで、選手たちはリラックスできる時間が増えた。

さらに、昨年の秋季大会で初戦敗退した後、大石監督は12月から2月まで日曜日を休日にした。静岡県は雪が降らず温暖なため、冬場もグラウンドで練習できる。しかし、大石監督は固定観念を捨て、選手たちに「時間を返す」ことを目指した。この改革により、選手たちは自分で考えて判断するようになり、シーズンオフも充実した。

この大胆な改革で、最初に効果が表れたのは顧問たちだった。日曜日を休日にしたことで、顧問たちは家族と過ごす時間が増えて元気を取り戻し、平日に無理なお願いをしやすくなった。

さらに、選手たちのフィジカル数値も向上した。掛川西では毎年、選手の入学時から筋力、柔軟性、瞬発力などを年に3回測定している。今夏に甲子園に出場したチームは、選手全員の平均値が大石監督就任後で最も伸びた。全国の強豪校でも測定されており、掛川西は県内でトップ、全国でも4位だった。

大石監督は、数値の向上は選手たちの頑張りの成果であり、日曜日を休みにしたこととイコールではないと述べる。しかし、練習に対する集中力は確実に上がり、チームに元気や活気が生まれた。チーム力は練習時間に比例するとは限らず、むしろ長時間練習は逆効果となる可能性がある。大石監督は、固定観念を打ち破った方針変更に手応えを感じている。