職場ドラマの新時代:コンプライアンスの壁とクリエイティブな解決策
地上波の「秋ドラマ」が続々とスタートしている。警察モノや医療モノ、法廷モノといった定番のジャンルは変わらず人気だが、あるドラマ制作会社関係者は、「お仕事ドラマやビジネスドラマは難しい。地上波では限界かもしれない」と漏らしている。
確かに今期は、一般的な会社を舞台にしたドラマが見当たない。菜々緒(35)が主演を務める「無能の鷹」がその例外だ。この作品は、同名の人気コミックを原作とした「超・脱力系お仕事コメディ」で、菜々绪が「有能オーラが半端ないのに圧倒的無能なヒロイン」を演じている。
ドラマ制作会社関係者は、現状の難しさを次のように説明する。「セクハラやパワハラなどのコンプライアンスの制約が非常に厳しくなっています。一般的な職場をリアルに設定すると、セリフに気を遣う必要があります。ひとつの言葉が大問題に発展する可能性があります。それゆえ、人畜無害なキャラクターばかり登場させると、ドラマが成立しなくなります。ある意味、セクハラやパワハラ上司の存在がドラマを成立させていたんですが、今はNG。お仕事ドラマ制作が難しい理由の一つです」
「無能の鷹」は荒唐無稽なコメディーだから、許されていると考えられるが、脚本家でライターの源祥子氏は次のように指摘する。「それでも、『こんな人が職場にいたら困ります』と大真面目に書き込む視聴者も結構います。10年ほど前から、脚本に対するコンプライアンスの要求が高まり、例えば大ヒットドラマ『半沢直樹』の、大和田常務に土下座させるシーンなど、現代では許されないかもしれません」
先日、あるアラサー女性のXの投稿が話題となった。「新人に何かを教える時に『一回教えたよね?』を言うやつはクソ。仕事できないのはお前」という内容に対し、多くの肯定的な反応が見られた。「一方的に『言う』だけで伝えたと思ってる」「禁句にした」などの意見が寄せられた。
大手メーカーの40代人事担当者は、「新人に『メモぐらい取れよ!』と叱責したらアウト。今どきの上司は肩身が狭い。上司のパワハラにもめげずに若手が成長するようなお仕事ドラマよりも、『無能の鷹』のほうがリアルかもしれない」と語っている。