NHK大河ドラマ「光る君へ」第36回:彰子の懐妊と運命の変転

NHK大河ドラマ「光る君へ」第36回:彰子の懐妊と運命の変転

NHK大河ドラマ「光る君へ」第36回「待ち望まれた日」

NHK大河ドラマ「光る君へ」の第36回「待ち望まれた日」が22日に放送されます。本作は、大石静氏が脚本を手がけるオリジナル作品で、平安時代の貴族社会を舞台に、『源氏物語』の作者・紫式部(まひろ)の生涯に迫る物語です。

第35回「中宮の涙」の展開

15日に放送された第35回「中宮の涙」では、中宮・彰子(見上愛)の懐妊を願い、道長(柄本佑)は御嶽詣(みたけもうで)に出発しました。一方、宮中では藤式部(まひろ)に背中を押された彰子が一条天皇(塩野瑛久)への秘めた思慕の情を涙ながらに告白し、初めての夜を過ごす様子が描かれました。

御嶽詣の旅路

まひろの亡き夫・宣孝(佐々木蔵之介)が派手な装束で御嶽詣をルンルンと報告していたシーンは、視聴者にとって懐かしいものでした。しかし、道長一行の旅路はかなり険しく、崖を踏み外す源俊賢(本田大輔)に頼通(渡邊圭祐)が手を差し伸べるシーンは、日本人の心に深く刻まれたCMを想起させました。

伊周のたくらみ

伊周(三浦翔平)がたくらむ道長襲撃プランは「小右記」の目録に記されていますが、史実と断言できるほどの資料は存在しません。しかし、「光る君へ」の伊周なら実行し得ると思わせる説得力があります。伊周を思う一心で、体を張ってたくらみを止める隆家(竜星涼)との兄弟の会話も印象的でした。

まひろの創作

御嶽詣から戻ると、まひろは第5帖「若紫」を書き終えていました。道長は、若紫と光る君の出会いに雀を逃がした幼少期のまひろとの邂逅に思いをはせ、ほほえましい気持ちになります。一方で、藤壺が光る君との不義の子を身ごもる描写にはギョッとする場面もありました。まひろの「我が身に起きたことはすべて、物語の種にございますれば」「ひとたび物語になってしまえば、我が身に起きたことなぞ霧の彼方」という切り返しの強さは、物語モードのまひろに道長が太刀打ちできないことを示しています。

彰子の感情移入

「若紫」は、道長だけでなく彰子の心も動かしました。光る君と若紫の関係性に自分を重ね、感情移入した彰子は「(若紫は)光る君の妻になるのがよい。なれぬであろうか。藤式部、なれるようにしておくれ」と切望します。しかし、まひろは「その息づくお心のうちを、帝にお伝えなされませ」と、本心を伝えるように背中を押します。

彰子の決意

数え十二歳で入内し、自らの意思で進むことも戻ることもできなかった彰子。ずっとニュートラルに入れてきたギアをベタ踏みし、一条天皇に「お上! お慕いしております!」とド直球で伝える涙の表情に、心を動かされない人間はいないでしょう。詩歌の世界に生きる人は「アイラブユー」をいかに使わずして本音を伝えるか、という技巧を凝らしていくが、火の玉ストレートの「好きです」の迫力を超えるのは至難の業です。

初夜と雪の描写

帝と彰子の初夜、雪の中を藤壺に歩く一条天皇の描写も印象的でした。「香炉峰の雪」でともに遊び、雪の日に薨去した最愛の皇后・定子(高畑充希)に思いをはせつつ、冬を愛する彰子のもとに向かっていく。決別ではなく、一条天皇も前に進んだのであろう。美しい夜でした。

第36回の展開

第36回では、彰子がついに一条天皇の子を懐妊し、宮中が色めき立ちます。彰子はまひろに、帝に対する胸の内を明かします。出産が近づくにつれて不安を抱える彰子に、頼りにされるまひろは、他の女房らに嫉妬されつつも、道長から新たな相談を受けます。一方で、清少納言(ファーストサマーウイカ)が、道長の指示で物語を書いたのがまひろであったことを知り、伊周に訴えます。

まとめ

初夜から懐妊までの展開は早すぎるようにも思えますが、彰子の身ごもる子どもは道長の、いや平安の運命を変える存在にもなりうるのです。登場人物が多く、ある意味大騒ぎの回ですが、史実に照らし合わせつつ、フィクションの部分も存分に楽しみたいところです。