『仮面ライダーガヴ』: お菓子の力で変身する新ヒーローが繰り広げる異世界からの挑戦

『仮面ライダーガヴ』: お菓子の力で変身する新ヒーローが繰り広げる異世界からの挑戦

『仮面ライダーガヴ』:お菓子の力で変身する新ヒーロー誕生

杉原輝昭監督が手がける最新作『仮面ライダーガヴ』は、お菓子の力で変身するという前代未聞の設定で、シリーズに新風を吹き込んでいます。杉原監督は、『仮面ライダーゼロワン』でシリーズ初のメイン監督を務め、以降の令和ライダー全作に監督として携わってきました。本作では、お菓子と仮面ライダーという斬新な組み合わせに挑戦し、その思いを語ります。

無理難題だからこそ前のめりになれる

「仮面ライダーとお菓子」という組み合わせを最初に聞いた瞬間、杉原監督は正直どうすればいいのか戸惑いました。仮面ライダーには戦いがありますが、お菓子には戦いとは無縁のハッピーなイメージが強いからです。しかし、令和になって6作目となる今作では、前作までとは異なる新しいことをしたいという気持ちは、杉原監督の中にもともとあったそうです。

「仮面ライダーとお菓子という組み合わせは、ちょっと面白いんじゃないか。そう感じて、前のめりになって取り組み始めました」と杉原監督は語ります。無理難題に燃えるタイプの彼にとって、斬新すぎること、誰もやっていないことに挑戦することは、創作の原動力となっています。

杉原監督の創作への情熱は、幼少期に見たさまざまな映画から培われました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ターミネーター2』、『エイリアン』、『インディ・ジョーンズ』、そしてジャッキー・チェンの『ポリス・ストーリー』など、観客の想像を超える世界観を表現し、ワクワクさせる作品に魅了されました。

「観客の想像を超える世界観を頭の中でイメージし、それをリアルに映像化することは、本当に難しいことです。しかし、それを魅力的な作品として見せられたら、僕もやってみたいという憧れが芽生えました」と杉原監督は振り返ります。

仮面ライダー1号と共通項が多いガヴ

主人公のショウマは、謎に包まれた異世界から人間の世界にやって来た青年です。本作は、ショウマが人間界でさまざまな人と出会い、自分の居場所を見つけて成長していく物語です。杉原監督は、この作品が過去数年の作品の中で、仮面ライダー1号との共通項が多いと感じています。

1号はショッカーによって改造人間にされましたが、ショウマも人間ではない知的生命体・グラニュートです。どちらも変身前から人間ではないという意味で、周りの人間とは異なる「孤独な存在」です。また、1号はショッカーから与えられた力でショッカーを倒し、ショウマは人間をさらう同じ種族のグラニュートを倒すという設定も、1号とガヴはリンクしています。

「ショウマが人間界で居場所を見つけていく物語」という言葉は、どちらも「人ならざる者」がアイデンティティを見つけていく物語とも言えます。プロデューサーの武部直美さんや脚本の香村純子さんとも話し合った結果、ショウマが戦う力を得てそれを使うためには、どのようなハートを持っているかが重要だと考えています。

「ただ力を持っているから、変身して戦う。そうではなく、どんな敵にやられても諦めずに何度でも立ち向かっていく勇気があるからこそ、仮面ライダーに変身して戦える。そういう描き方も、1号とガヴは共通点があると思います」と杉原監督は語ります。

原点を意識した斬新な設定

『仮面ライダーガヴ』の設定が斬新だからこそ、原点を意識した部分もあります。杉原監督は、今作に限らず1号という原点は、どの作品の監督も常にどこかで意識しているものだと考えています。

杉原監督が作品づくりで心がけているのは、小学生くらいの子供がメインターゲットであることから、難しい表現をやりすぎると伝わりづらいし、かといって簡単な表現だけだと子供に対して失礼だと感じています。そのため、わかりやすく伝わる部分もありつつ、細かい設定や伏線、深みや重みのあるドラマも盛り込み、子供の感性の可能性に訴えかけ、大人になって見返したときに新たな発見がある作品にしようと心がけています。

撮影現場では、演技経験の少ない若いキャストが多いことから、監督として納得できるシーンがなかなか撮れない場合もあります。しかし、根気強く、若いキャストたちと話し合いながら、時間をかけて丁寧に成長していく芝居をしっかり撮ることを重視しています。これは、大河ドラマと同様に1年間をかけて撮影する『仮面ライダー』シリーズの特徴であり、魅力でもあり、監督としての醍醐味だと言います。

今後の展開が楽しみ

物語的には、どんどんディープでエグい人間ドラマが展開されていきます。隠されていたショウマの過去なども明らかになりますが、映像はガヴらしくポップでカラフルに描いていきたいと考えています。

杉原輝昭監督は1980年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、『仮面ライダー555』に助監督として参加し、以降は東映特撮作品を中心に助監督や監督として参加。主な監督作品には、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』『仮面ライダーゼロワン』『仮面ライダーギーツ』などがあります。

『仮面ライダーガヴ』は、異世界からやって来た青年・ショウマが、人間界で少年と出会ったことをきっかけに仮面ライダーガヴに変身する力を得て、人間たちを襲う知的生命体・グラニュートとの戦いを繰り広げます。毎週日曜午前9時からテレビ朝日系列で放映中です。