北村匠海初監督、『世界征服やめた』短編映画で人生の意味を問う

北村匠海初監督、『世界征服やめた』短編映画で人生の意味を問う

北村匠海が初監督を務める短編映画『世界征服やめた』、2025年2月全国順次公開

俳優であり、アーティストとしても活躍する北村匠海が、初めて短編映画の脚本・監督を務めた作品『世界征服やめた』が、2025年2月から全国で順次公開されることが決定した。北村監督からのコメントも到着している。

本作は、2011年6月23日に不慮の事故で亡くなったポエトリーラッパー・不可思議/wonderboyの代表曲「世界征服やめた」に強く影響を受け、北村匠海が脚本を書き下ろし、自ら監督を務めた短編映画である。

物語は、変化の乏しい日常を過ごす主人公・彼方(かのべ)を中心に展開する。彼方は内向的な社会人で、社会の中で生きる中で「自分なんて誰にも必要とされていないのではないか」と感じ、時には「この世から消えたい」と思う瞬間もある。彼方の同僚である星野は、どこか飄々としているが、白黒をはっきりさせたがる性格。星野が選んだある決断が、彼方の人生を大きく揺るがす。

「死」の意味を知ることで、彼方は明日の選択が自分でできることを実感する。世界征服という途方もない夢を追いかけるよりも、自分にしか描けない道があることを痛感する。自分は小さくても、光に手を伸ばしている。生にすがることの尊さと、「人生の主人公は自分しかいない」というメッセージが込められたヒューマンストーリーが完成した。

北村匠海監督からのコメントは以下の通りである。

「学生時代の僕は、正直絶望していました。自分にとって未来が光あるものに思えなかった。そんな中出会ったのが、ポエトリーリーディングという音楽ジャンル。中でも不可思議/wonderboyさんでした。そして『世界征服やめた』は、僕の人生を変えた曲です。

不可思議/wonderboyさんを知った頃には、彼はもう亡くなっていました。悲しかったんです。あなたに救われた人は今もまだたくさんいますと伝えたかった。だから映画を作りたかったというのはお門違いなのかもしれませんが、『世界征服やめた』からもらった感情をいつか映画にしたかった。20歳の頃から言い続けた結果、自分が脚本・監督をやるまでに至りました。

社会人として生きるということ、そこには生活があるということ、期待していた自由ではなく絶望すらも滲む大人という概念の中で、生きて生きて生きて生きて生きるということ、生きているということは何なのか。笑うということなのか、ご飯が美味しいということなのか、友達がいるということなのか、暗闇ということなのか、小さな光を掴むということなのか。何度も書けなくなった脚本に、何度も何度もついてきてくれたスタッフさんや、キャストさん、エキストラの皆さん、全員に感謝です。」

不可思議/wonderboyの軌跡

2009年に彗星のごとく現れた不可思議/wonderboyは、独特な言葉のセンスとパフォーマンスで注目を集め、2011年には日本を代表する詩人・谷川俊太郎と共演し、本人の許諾を得て「生きる」を音源化。透き通った声で歌われた同曲は、3.11直後の日本人に響き、一夜で完売した。

その勢いのまま待望の1stアルバムを発表する予定だったが、2011年6月23日に不慮の事故で亡くなった。24歳という若さだった。彼の死後、彼の音楽は人々に認められ、現在では日本語ポエトリーリーディングを語る上で絶対に外せない存在となっている。

『世界征服やめた』は2025年2月、ヒューマントラストシネマ渋谷を皮切りに全国で順次公開される。北村匠海監督の初監督作品として、彼の多才な才能が存分に発揮された本作に注目が集まっている。