真田広之、本物の時代劇への情熱がエミー賞18冠に輝く

真田広之、本物の時代劇への情熱がエミー賞18冠に輝く

真田広之、エミー賞主演男優賞受賞 「SHOGUN 将軍」で18冠達成

真田広之(63)が製作、主演したドラマ「SHOGUN 将軍」(ディズニープラス)が、米エミー賞で18冠を獲得した。この作品は、真田の長年の「本物の時代劇」へのこだわりが結実した形だ。

21年前の「ラストサムライ」でハリウッド映画に初出演して以来、真田は日本発の世界向け時代劇に情熱を注いできた。彼が現地メディアの取材で繰り返し口にしていた言葉は「authentic(本物の、正真正銘の)」だった。これは、殺陣、所作、時代考証など、日本人から見て違和感のない時代劇を作りたいという思いを表している。

「SHOGUN 将軍」は、映画「大脱走」の脚本でも知られる英国の作家ジェームズ・クラベルの小説が原作だ。1980年には、三船敏郎や島田陽子が出演して米国でドラマ化されたが、描写の一部に違和感があった。しかし、真田版では、壮大なセットや細部にわたる時代考証、衣装、登場人物のしぐさが「ごく自然」に見えるため、前作に比べて格段の説得力がある。また、字幕を使用し、大部分の日本人キャストのセリフが日本語であることも大きな魅力となっている。

真田は子役時代から日本舞踊を学び、18歳の時に「柳生一族の陰謀」で本格的な時代劇に取り組んでから、日々殺陣のキレや所作を磨いてきた。製作者として撮影中は「見られるところはすべて見た」と語る真田の「authentic」の思いが、作品の隅々まで行き渡っている。

実は「ラストサムライ」出演時も「嫌われるほど、何から何まで口出しした」と明かしている。そのかたくなな姿勢がハリウッドの映画マンに響き、以降の出演作では助言を求められる機会が増えた。例えば、「ウルヴァリン SAMURAI」(2013年)、「47RONIN」(2013年)、「モータルコンバット」(2021年)など、サムライが登場する作品では、真田の動きに関する思いが生かされている。一方で、セットなど背景には内心納得のいかないところも少なくなかった。

今回は製作者として、これまで培った現地スタッフの信頼に加え、日本からも専門スタッフを招き、盤石の態勢が整った。真田の持ち前の頑固さは、一歩も引かない交渉力となり、製作会社のディズニーをその気にさせた。黒澤明作品をほうふつとさせる「質感」の背景には、ディズニーの資金力があったことは間違いない。

「authentic」実現の裏には、21年間の真田の信念と努力がある。彼の情熱とこだわりが、世界の舞台で高く評価された証明だ。【相原斎】