女性ストラテジスト・エリーズ・モーリー、WECハイパーカー戦線で奮闘「ル・マン制覇への情熱」
キャデラック・レーシングでストラテジストを務めるエリーズ・モーリー。2024年WEC第7戦富士6時間レースは9月13日から15日にかけて富士スピードウェイで開催された。レースはポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ6号車が2勝目を挙げて幕を閉じたが、一方で、予選で初のポールポジションを獲得し、決勝でも活躍が期待されたキャデラック・レーシングの2号車は、クラッシュにより戦列を去ることとなった。ブルーのカラーリングが目を引くキャデラックVシリーズ.Rは、最終的に大きなダメージを負ってしまった。
キャデラック陣営を率いているのは、ゼネラルモーターズ(GM)のスポーツカーレース・プログラムマネジャーを務めるローラ・ウォントロップ・クラウザー。彼女は数少ない女性トップの一人として知られている。しかし、キャデラック陣営には彼女以外にも注目の女性スタッフがいる。それが今季から同チームでストラテジストを務めている32歳のフランス人、エリーズ・モーリーだ。
エリーズは、子どもの頃に父に連れられてレースを見に行き、興味を持ったという。当時は女性がモータースポーツの世界で働くことを想像していなかったが、学生時代からエンジニアリングに興味を持ち、さまざまなチームで手伝いをしながら、この仕事に女性でも挑戦できると確信した。
エリーズのキャリアは、フランスのストラスブール出身の彼女がWRTでブランパン・シリーズ(現在のGTワールドチャレンジ)のパフォーマンスエンジニアとして始まった。その後、プレマやロシアンタイム(現在のUNI Virtuosi Racing)でFIA F2のパフォーマンス・エンジニアを務め、業界で出会ったご主人と結婚。ニュージーランドでM2コンペティションというチームを立ち上げ、フォーミュラ・リージョナルのエンジニア兼マネージャーとしてチーム運営に携わった。
その後、エリーズはヨーロッパに戻り、VLNシリーズでマンタイ・レーシングに加入。ポルシェのパフォーマンス・エンジニア兼ストラテジストを担当した。今年の開幕前、キャデラックに加入したが、拠点はベルギーの自宅にあり、レースの現場に足を運ぶ形で仕事を続けている。
ハイパーカー・カテゴリーでの仕事は責任重大だが、エリーズはさまざまなカテゴリーでの経験を活かし、堂々とした仕事をこなしている。レース中はライバルのラップタイムやデータを分析し、タイヤ選択や戦略をリアルタイムで決定する。特に、急な天候の変化や異なるタイヤコンパウンドの選択など、迅速な判断が求められる場面が好きだという。
レース後は、結果を振り返り、どのタイミングでどうすべきだったかをデータ分析することで、達成感を味わうことができる。今年、最も印象的だったレースはル・マンで、将来的にはそこで勝つことが夢だという。
富士のレースは残念な結果に終わったが、最終戦のバーレーンではどのような活躍を見せてくれるか注目される。チームとしてもシーズン後半戦に入ってから調子を上げており、良い形で一年を締めくくってもらいたい。