【感動の舞台甲子園】消化試合も熱狂の宴、阪神ファンの情熱が創り出す野球の魅力

【感動の舞台甲子園】消化試合も熱狂の宴、阪神ファンの情熱が創り出す野球の魅力

大勢のファンが詰めかけた甲子園球場で、セ・リーグの阪神対DeNAの試合が行われ、阪神は0-2で敗れた。試合後、レギュラーシーズン本拠地最終戦のセレモニーが行われ、マウンド上の岡田彰布監督を中心に選手たちが整列し、今季の感謝の一礼を行った。

試合は8回まで無安打が続き、岡田監督も「ノーヒットノーランをやられると思った」と語ったが、笑顔で「別にやられてもええけど」とコメントした。この試合は2位が決まった後の消化試合だったが、スタンドの熱気は冷めやらず、観客は4万2620人を記録。今季の観客動員数は300万人を突破し、コロナ禍前の2019年以来5年ぶりの記録となった。

観客たちは単に阪神の勝利を見に来たわけではない。作詞家阿久悠が2003年の優勝時に本紙に寄せた詩『平成球心蔵』は、人々の思いをよく表現していた。

人間は歓びたい 人間は歌いたい 人間は踊りたい 人間は夢みたい 人間は信じたい 人間は熱中したい そして 人間は 正直に 正直に 嬉しいと叫びたい さらに さらに 今ある幸福をしっかりと掴み 半分を同じ志の人に分け与えたい

この夜も、観客たちは歌い、踊り、周囲の人々と歓びを分かち合った。9回の2安打にも熱狂し、敗戦でも笑顔が見られた。勝利の際に流れる「六甲おろし」が敗戦後でも流れ、歌声が秋の夜空に響き渡った。

阿久悠が1997年に本紙で連載した小説『球心蔵』は、イラストを同じく猛虎党の山藤章二が描いていた。阪神が巨人を打倒して優勝する物語が「忠臣蔵」仕立てになっており、多くの名言がちりばめられていた。

「負けても美しく、下手でも感動を呼ぶのが野球やないか」。阪神の選手たちは、そんな野球を目指している。