AIアートと著作権:ジェイソン・アレンの挑戦と米当局の対立
ジェイソン・アレン(41)は、デジタル時代のクリエイターとして知られており、人工知能(AI)ツールのミッドジャーニーを使用してイラスト作品を作成している。彼は現在、米国著作権局が彼の作品の著作権を認めないという決定に異議を唱えている。
2年前、アレンはSNSで流れてきた生成AIによるシュールな風景画像に興味を持ち、テキストから画像を生成するAIツールのミッドジャーニーを試してみることにした。彼が100時間以上を費やして作成した、ビクトリア朝風のドレスを着た女性たちが宇宙ヘルメットをかぶったイラストは、コロラド州のアートコンテスト、Colorado State Fairのデジタル加工写真部門で1位を受賞した。
しかし、アレンがこの『宇宙オペラ劇場(Théâtre D’opéra Spatial)』と題したイラストの著作権を申請したところ、著作権局は申請を却下した。却下の理由は、この作品が「人間による著作物」ではなく、入力したプロンプトが「十分に創造的」なものかどうかを当局が判断できかねるというものだった。
アレンは624個のテキストベースのプロンプトを書いてこの作品を完成させたため、著作権局が著作権を認めないことは、彼を失望させた。彼はフォーブスに、「この作品の製作当時に、ミッドジャーニーのバージョン2を使って自分が求めるようなスタイルを生み出すのはとても困難だった。私は、このイラストを膨大な努力の結果、生み出した」と語った。現在、アレンは著作権局を相手取る訴訟を起こし、連邦裁判所にその決定を覆すよう求めている。
著作権局は係争中の訴訟についてのコメントを控えている。ミッドジャーニーは、コメント要請に応じていないが、同社のウェブサイトには、アーティストが自ら作成したすべての画像の所有権を持ち、それを自由に使用できると記載されている。また、利用規約には、そのソフトウェアを通じて作成された作品には、ミッドジャーニーが使用するための著作権が割り当てられているとも書かれている。
アレンは、著作権局が彼の作品に著作権を与えることを拒否した後、他のアーティストがその作品を盗用して、アマゾンやEtsy(エッツィ)、NFTマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)などで販売したと述べている。例えば、ある人物は、アレンの画像全体を自身のAIで生成した作品に組み込んで、「偉大なアーティストは盗む」との言葉を引用しながら、「このイラストには著作権が認められていないため、盗作ではない」と主張した。
AIの使用に関する議論は、生成AIソフトのトレーニングにインターネット上の膨大なデータが使用されることの合法性を巡る広範な議論が行われている中で起こされた。昨年は生成AI企業のミッドジャーニーやStability AI(スタビリティAI)、Runway(ランウェイ)などが、何十億もの著作権で保護された作品を許可や報酬なしに無断で使用したとして、アーティストたちによる集団訴訟が起こされた。この訴訟は先月、著作権侵害に関する訴えの一部が却下されたものの、証拠の開示に進むことが認められた。これにより、アーティストたちはAIモデルのトレーニングデータを覗き見ることが可能になる。
AI企業は、訴訟を全面的に棄却するよう裁判所に求めている。ランウェイは、アーティストたちがAIモデルを用いて自分の作品と全く同じコピーを作成することができなかったと主張している。スタビリティAIは、アートのスタイル自体は著作権で保護されないと主張し、AIモデルは、アート作品ではなくコードの一部であるため著作権を侵害していないと述べている。また、ミッドジャーニーの弁護士はそのAIモデルをコピーマシンに例え、基盤となるテクノロジーそのものは、著作権を侵害していないと主張している。
著作権局は、AIが所有権や知的財産にとって何を意味するのかに対処しようとしている。150年の歴史を持つ著作権局は、AIが引き起こした現代の問題に対して何世紀も前に制定された法律をどのように適用するかを検討している。同局は、AIシステムのトレーニングに著作権で保護された作品を使用することが違法なのか、それとも多くのAI企業が主張するようにフェアユース(公正な使用)に該当するのか、またAIの助けを借りて作成されたどのような種類の作品が著作権で保護されるのかを検討している。
2023年3月に著作権局は、完全にAIのみで生成された作品には著作権登録を行わないという決定を下した。しかし、それでもAIを利用しつつも人間の著作と創造性が一定レベルで示されている作品についてはまだ検討の余地がある。今年2月に同局は、AIの使用が多すぎて人間のインプットが不十分だと判断された作品をブロックする一方で、歌詞や文章、ビジュアルなどに生成AIの要素を含む100点以上の作品の著作権登録を許可した。
著作権局の判断に異議を唱えたのは、アレンだけではない。4月には、ChatGPTを使って自身の本を執筆し、Amazonでセルフパブリッシングしたエリサ・シュープが、生成AIのテキストの選択と配列に関する著作権を取得するための訴えを起こし、勝訴したとWiredが報じた。
アレンは、例えばある作品が、1回のプロンプトのみで生成されたものであっても、その作品は著作権法で保護されるべきだと考えている。「私たちが、どれだけ努力したかを証明する必要はない。あなたがAIツールを補助的な道具として使用して、何かを創造したのであれば、あなたは、その作品の著作者でありクリエイターなのだ」とアレンは主張している。
アレンは現在、自身のオンラインギャラリーを運営し、AIツールの助けを借りて生成したイラストのプリント版を販売している。自身をアーティストではなくデジタルクリエイターと呼ぶ彼は、AIの助けを借りて生み出したすべての作品が、著作権で保護されることを望んでいる。「ミッドジャーニーのすごいところは、アーティストでなくてもアートを作れるようにした点だ」と彼は語った。