レッドブルのドライバースイッチ:リカルドからローソンへ、ホーナー代表の戦略と期待
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は9月26日、ダニエル・リカルドがチームを離脱し、今シーズンの残り6レースはリアム・ローソンがVCARB 01を駆ることを正式に発表した。このドライバースイッチについて、ホーナー代表は『F1』公式のポッドキャストで決断の理由を説明した。
ホーナー代表は、シンガポールGPからアメリカGPまで3週間の間が空いているが、「3週間レースはないけれど、全然休める時期ではない。我々は次のレースであるオースティンに向けて、全力で改善するために取り組んでいる」と現状を語った。
インタビュアーから「ダニエルについて聞かせてほしい。あなたが下した決断は、なぜ今だったのか?彼に、今季最後まで戦わせるという選択肢はなかったのか」と尋ねられ、ホーナー代表は「もちろんその判断もあったかもしれないが、より広い観点から我々は今すべきことを決断した」と答えた。
今季は角田裕毅とリカルドがVCARBのレギュラードライバーだったが、第19戦アメリカGPから6レースは、リカルドとローソンがスイッチすることになった。ホーナー代表は「残り6レースはユウキ(角田裕毅)とリアムが並んで戦うことになる。彼らがどのようなパフォーマンスを見せるのか、それを確認する絶好の機会になる」と述べた。
リカルドについて「ダニエルはレッドブルに再昇格することが目標だと公言していた。なぜそれは起こらなかったのか?」と聞かれ、「それは難しい問題だ」と前置きしつつ、「我々には多くのスポンサーやパートナーシップがいて、そのイベントに参加したり、ファンの前でデモランを行ったり、握手など交流したりする。マックス(フェルスタッペン)はそれに参加するのが大嫌いみたいだからね。こういったイベントでも明るく振る舞うリカルドはその役割を担う点でも大きかった」と説明した。
しかし、「マクラーレン(2021年~2022年)で悪い癖がついたみたいで、それがなかなか抜けなかったみたいだ。ただ、2023年の夏にはシルバーストンでテストをして、十分なポテンシャルを示した。当時、ニック・デ・フリースがアルファタウリで苦戦していて、ダニエルを起用することにした」と続けた。
リカルドはハンガリーでの初戦から良かったが、オランダGPでクラッシュし、手を骨折して4~5レース離脱することになった。この際の代案がリアム・ローソンだった。「リアムも遜色ない走りができると示していた。だから、今回は若手に引き継ぐ選択をした」とホーナー代表は述べた。
2014年当時のレッドブルでは、マーク・ウェバーが抜け、リカルドが加わった。F1新規定の初年度で、V8からV6に移行した後は前年と大きく特性が異なるマシンになったが、「ダニエルはセブ(セバスチャン・ベッテル)よりうまく対処していた。その年にダニエルは3レース勝利した」とホーナー代表は振り返った。
しかし、キャリアが長くなればなるほど、ドライビングが難しくなるという側面もあると指摘。「優れたクルマに乗っていて、それから下位チームのマシンに乗り換えると多くの問題があって、それに対処しないといけないからね」と述べた。
2024年のマイアミGPでは、リカルドがスプリント予選で4番グリッドを獲得し、スプリントレースでもP4フィニッシュを果たしたが、「今季はシーズンスタートから力を発揮できていないし、一貫性がないとも見ていた」とホーナー代表は評価した。
レッドブルグループは過去にもシーズン途中で現有戦力を見限り、ドライバースイッチを行う決断を見せてきた。「これはレッドブル(グループ)として統括的な判断だった。まず、我々(レッドブル)はセルジオ(ペレス)と2025年の契約を結んでいる。すでにラインナップが揺るぎない状況であることは明白だ」と説明した。
ホーナー代表は、もしペレスを見限った場合、リカルドを優先して採用するつもりでいた。「ダニエルがすべきことは自分自身の力を示して、今一度ポジションを取り戻すことだった。そして、チェコが結果を出せなかった場合に、そのピースとしてそこにいたんだ」と述べた。
今季、ベアマンはフェラーリとハースで1戦ずつ、コラピントはイタリアGPからシートを獲得し、ともに存在感を示している。「ベアマンはフェラーリと、そして戦力的に厳しいハースで(今季1レースずつ)戦い、それぞれ見事な役割を果たした。ハースではニコ(ヒュルケンベルグ)にも見劣りしない戦いぶりを見せたし、コラピントもいきなりF1で好調なところを見せた」とホーナー代表は評価した。
レッドブルグループは結果的に35歳のベテランであるリカルドを見限る決断を下した。一方で、昨季から見せているローソンの順応性や、ベアマンやコラピントなど成長著しい若手がF1の舞台でも存在感を示したことで、ホーナー代表は若手にシフトすることを視野に入れたのかもしれない。
今季は第19戦アメリカGPから第24戦アブダビGPまで、VCARBは角田&ローソン体制で挑むことになった。来季のVCARBシートについては角田が決まっている一方で、もう一席は未定となっている。来季もこのまま角田&ローソンで挑む可能性が高いと見られるが、新規定となる2026年以降も見据え、VCARB今季残り6レースの戦いは要注目となる。