新庄監督の戦略と伊藤大海の手腕、日本ハムの日本シリーズへの挑戦
日本ハムが2年連続最下位から2位に躍進した今季、新庄剛志監督の若手育成がチームの6年ぶりAクラス進出に大きく貢献した。特に「新庄チルドレン」の象徴となった伊藤大海は、パ・リーグのエースとして成長を遂げた。
伊藤は2021年のルーキーイヤーから2年連続で10勝、防御率2点台を記録していたが、昨季は7勝10敗、防御率3.46と不本意な成績に終わった。それでも新庄監督は今季の開幕投手に伊藤を抜擢。伊藤は6回4安打無失点の好投で勝利を手にし、チームに勢いをもたらした。
その後も伊藤が登板した試合でチームは開幕から7連勝。自身も6月上旬に初黒星を喫するまで4連勝と、チームの開幕ダッシュに大きく貢献した。今季は26試合に登板して14勝5敗、防御率2.65という自己ベストの成績を残し、最多勝と最高勝率の2冠を獲得した。
しかし、12日(土)に開幕するロッテとのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージで、伊藤がマウンドに上がる機会はないかもしれない。8日の楽天戦で15勝目をかけて先発した伊藤は、7回2失点の粘投むなしく今季5敗目を喫し、113球を投げたため、登板間隔を考えると少なくともファーストステージ2戦目までの先発は難しいとみられる。
ファーストステージは2戦先勝方式の超短期決戦で、通常はエース格の投手を初戦ないし第2戦に登板させるのが常套手段。2連敗を喫すれば、登板機会がないまま終戦を迎えるためだ。伊藤が第2戦に投げるとすれば、中4日での登板となり、球数は限られるだろう。
新庄監督は日本シリーズに進出できないなら、ファーストステージ敗退も、ファイナルステージ敗退も同じと考えているかもしれない。つまり、伊藤以外の投手でファーストステージを乗り切り、ソフトバンクとのファイナル第1戦(16日開幕)に伊藤を登板させる算段なのではないか。そうすれば、伊藤がソフトバンクとのファイナルで2度マウンドに上がることも可能になる。
もちろんロッテとの戦いがもつれるようなら、第3戦の先発や第2戦でのリリーフ登板も考えられる。日本ハムはロッテに対して18勝6敗1分と大きく勝ち越しており、絶対の自信を持つ。伊藤以上にロッテ戦で結果を残している先発投手もいる。
左腕の加藤貴之は今季ロッテ相手に5勝1敗、防御率1.85。同じく左腕の山崎福也は2勝0敗、防御率0.59とほぼ完璧にマリーンズ打線を封じている。また、北山亘基もロッテ戦で1試合を投げただけだが、完封勝利を収めており、伊藤をファイナル第1戦に温存することは理にかなっている。
もちろん伊藤が登板しないまま敗退するリスクもあるが、新庄監督が見据えるのはあくまでも日本シリーズの大舞台。新庄劇場の集大成はまもなく幕を開ける。