中国、2025年にも量子暗号通信衛星を打ち上げ、地球規模のネットワーク構築へ
中国は2025年にも「量子暗号通信」衛星を地球低軌道(LEO)に打ち上げる予定だと、中国メディアの第一財経が報じている。2016年8月には、量子通信と暗号化に重点をおいた量子科学実験衛星「墨子」を打ち上げ、2022年には中国科学院(CAS)が量子鍵配送(QKD)をテストする小型衛星「済南1号」を打ち上げている。
CASの量子情報・量子科学技術イノベーション研究所所長の潘建偉氏は、2025年には2~3機の量子暗号通信衛星が打ち上げられ、2027年にはさらに1機が地球中軌道(MEO)に打ち上げられると述べている。これにより、今後5~6年で量子暗号通信ネットワークが実現できる見通しである。
中国の新しい量子暗号通信は地上ネットワークと統合され、より広範囲、最終的には地球規模のカバー範囲を実現する予定だ。潘氏は「中国は量子暗号通信分野での国際協力に非常に前向きで、さらなる国際交流を行う用意がある」と述べている。
潘氏はまた、「中国での量子暗号通信の利用者は急増している」と説明。中国最大の通信会社である中国電信(チャイナテレコム)は、2023年末時点で300万人の量子暗号通信のエンドユーザーを抱えており、2024年中には500万人を超えると予想されている。
現在のインターネットでは、SSL暗号方式が広く使われており、鍵を生成するのに「RSA」というアルゴリズムが活用されている。しかし、量子コンピューターが実用化されれば、RSA暗号が解読され、オンライン取引などの通信の安全性が損なわれるリスクが指摘されている。これに対策として、量子暗号が進められている。量子暗号は、物質の量子論的性質に基づき暗号鍵を生成することで、絶対に計算不可能な暗号を作り出し、通信の安全性を保証する技術だ。
日本でも、情報通信研究機構(NICT)や東京大学大学院工学研究科、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)、次世代宇宙システム技術研究組合(NeSTRA)、スカパーJSATが量子暗号通信に取り組んでいる。総務省は東芝やNECなどを対象候補にして、2025年にも実用化支援を開始する予定である。