「ホントにソーリーじゃねーよ」…小川智大、パリ五輪落選の悔しさと次の目標へ
世界最高峰のリベロとして知られる小川智大(28歳/ジェイテクトSTINGS愛知)が、悲願のオリンピック出場を逃した。6月23日の夜、パリ五輪の12名の選手が発表され、小川は悔しさを噛みしめた。フィリップ・ブラン監督が小川に声をかけ、「ソーリー、トモ、ソーリー」と何度も謝罪したが、小川は「大丈夫、大丈夫だから」と応えた。
その夜、小川は部屋に戻り、同部屋の山内晶大に気を遣わせまいと、一人でエレベーターに乗り、ホテルのロビーで座った。スマートフォンをいじりながら、落選の現実を受け入れた。その後、アメリカ代表の選手たちが通り過ぎ、その一人が目の前でオナラをしたという意外な出来事が、小川の気持ちを少しだけ和らげた。
ポーランド代表の主将バルトシュ・クレクから届いた長文メッセージには、小川の努力を称える言葉が詰まっていた。クレクは「お前はいいやつだ」と書き、「オリンピックに出られようと、出られなかろうと、バレーボールは終わらない」と励ましてくれた。小川はその言葉に何度も涙腺が刺激された。
小川は、パリ五輪に同行することを決意し、「パリは僕の夢だった」と語った。ネーションズリーグのファイナルで銀メダルを獲得した後、オリンピックに向けて渡欧し、最後まで日本代表として共に戦った。準々決勝のイタリア戦後、小川は仲間たちと一緒にコートに入り、山本智大のところへ駆け寄った。小川は「みんな、本当にいいプレーを出して最後まで戦っていました」と語り、涙は出なかった。
パリ五輪を終え、小川は再びロス五輪を目指す4年が始まる。しかし、まだその気持ちが固まっていないと語る。「今まではパリのことだけ考えてきたから、これからも一人の選手として、毎日やるべきことは同じ。でも、それがロス五輪に向かうかはわからない。まずはSVリーグでジェイテクトSTINGS愛知で優勝したい」と、目の前の目標に集中することを決意している。
世界一のリベロが2人いるという状況は、小川にとって誇らしくも悔しいものだ。「どっちが出ても強いけど、誰だって、『俺が出たほうが強い』って思っています」と、笑顔の奥に闘志を秘める。一本の精度にこだわり、妥協しない姿勢は変わらない。一歩ずつ、一球ずつ、丁寧にバレーボールと向き合い続ける決意を新たにしている。