雨宮天&伊藤美来が語る、『がんばっていきまっしょい』のリアルな青春と繊細な心情描写
10月25日から全国公開される劇場アニメーション『がんばっていきまっしょい』は、1995年に「坊っちゃん文学賞」大賞を受賞した敷村良子の同名小説が原作。転校生の熱意をきっかけに、廃部だったボート部を幼なじみやクラスメイトと共に復活させ、練習に励む少女たちの青春を描く作品だ。
主人公・村上悦子(悦ネエ)役を演じる雨宮天と、悦子と幼なじみの佐伯姫(ヒメ)役を演じる伊藤美来が、本作の魅力や演技へのこだわりについて語った。
雨宮は、本作が王道の青春ストーリーでありながら、非常に繊細な部分まで描かれていることに驚いたと話す。「キャラクターたちの心情表現がとても細やかで、ボートという大きなテーマがありながらも、日常の中にある青春や心の機微が緻密に表現されている」と述べた。
伊藤は、実写のイメージが強い作品が令和にアニメ化されることに驚いたと語る。「実写映画やドラマで描かれていたボート部のキラキラした青春や、思春期ならではの葛藤が、現代の背景を取り入れながらアニメならではの表現で新しく描かれているところが魅力」と述べた。
また、CGでのアニメ化により、美しい3D空間の演出も印象的だ。雨宮は、舞台である愛媛県松山市を実際に訪問し、作中に登場する場所を巡ったことを明かした。「松山の景色がどれほど忠実に再現されているかを実感しました。地元の方が見ればすぐに分かるでしょうし、アニメを見た方も実際に訪れてみたくなると思います」と語った。
伊藤も、松山の美しさや年季の入った部室の雰囲気を早く体験したいと述べた。「アニメを見て、松山はこんなに素敵な場所なんだって、行ってみたくなると思いますね」と期待を込めた。
キャラクターの声も実写に近い自然なニュアンスで表現されている。雨宮は、悦ネエをローテンションなキャラクターとして演じ、アニメ特有の表現に頼りすぎないように心がけたと語る。「日々の気分や小さな変化を繊細に描いているので、リアルな音や等身大の女子高生ならどんな声を出すのかを突き詰めて考えながら演じました」と述べた。
伊藤も、実写に近い自然なお芝居を心がけたと語る。「ヒメは裏表がなく、誰からも好かれるような明るく優しい性格で、悦ネエやほかの子たちの表情もよく見て気遣いができる子です。悦ネエの成長や葛藤を隣で見ながら献身的に支える姿が印象的でした」と述べた。
ヒメは悦ネエにとって心の支えになっている。雨宮は、悦ネエが客観視はできていないものの、ヒメが常に理解してくれているからこそ、必要なことは言ってくれるが、踏み込んでほしくないところには踏み込まない自然な存在だと感じたと語った。
5人の関係性について、伊藤は「みんな、自分の気持ちに正直でまっすぐ」と述べた。「『負けたくない』『もっと上手くなりたい』という強い思いを持っている素直な子ばかりで、それぞれがしっかりとしたパワーを持っているからこそ、物語を動かす原動力になっている」と述べた。
雨宮も、5人が個性が強く、それぞれがしっかりとしたパワーを持っているからこそ、物語を動かす原動力になっていると語った。「悦ネエもみんなから影響を受けて気持ちを動かされる部分が大きかった」と述べた。
また、悦ネエとリーが衝突するシーンも非常にリアルだ。雨宮は、そのシーンを収録した際、心が痛むし、ムカつくし、自分が悪いと分かっていても謝りたくないという複雑な感情を表現するために、自分の体験を引き出して、リアルな状況での体の反応や声の出し方を意識して演じたと語った。
伊藤も、ヒメ視点で心が痛む状況だったと述べた。「自分が怪我をしたことよりも、悦ネエが沈んでしまう姿を見ているほうが辛かった」と語った。
作中には「一艇(いってい)ありて一人(いちにん)なし」というボート用語が登場する。雨宮は、お芝居にもこれに近いところがあると述べた。「自分が投げかけたセリフに相手が反応してくれないと、掛け合いがうまくいかなくなってしまう。テンポ感やセリフのキャッチボールがすごく大切」と述べた。
伊藤も、アフレコ現場や朗読劇で一層感じると述べた。「ステージの上での掛け合いはより生物感があって、照明や音響も含めて全てが息を合わせないと進まない」と述べた。
最後に、雨宮は映画の公開を楽しみにしている人々に向け、「美しい絵に圧倒されると思います。カメラワークも非常に凝っていて、広がる景色やボートに乗っているときの海の風景など、臨場感がすごい。キャラクターたちの心理描写もとても繊細で、胸の深い部分にグッと刺さるような共感できる部分がたくさんあると思います」とメッセージを送った。
伊藤も、「『がんばっていきまっしょい』は、昔から多くの人に愛され続けてきた作品で、今回の劇場アニメでもその魅力がしっかりと受け継がれています。原作をご存知の方には懐かしさと新しさを感じていただけるリメイクになっていますし、初めてこの作品に触れる方も、彼女たちの青春の輝きや一生懸命な姿にきっと共感できると思います」と述べた。